2016年3月4日金曜日

『呼吸で心を整える』 手書きパネルをつくる


販売ステージの印象を変える

『呼吸で心を整える』は1月の下旬に一等地の販売ステージを確保し、その台を工夫して16
面ができる状態を作り、150冊のボリューム陳列に出版社から送られてきたパネルをつけて仕掛け売りをスタートさせました。




その時、表紙やパネルに使われているフレーズが一見のお客さまにはわかりづらいものだろうと思われましたので、作品と読者をつなげられるようなフレーズを探し出し、手書きのPOPを作成しました。


そのおかげでお客さまの支持を得ることができ、まずまずの販売実績を上げることができました。突出した売上とはなりませんでしたが、週間ベストの上位に食い込むことができました。




2月の月間ベストを出してみるとビジネス書の分野で3位に入っています。



ただ週単位の売上の推移を見てみると、好調だった月の前半に比べ、後半の週は数字的に落ち込んできている印象を受けました。

仕掛け売りを始めて1か月が過ぎると、陳列がマンネリ化するように感じられることもあり、そろそろパネルやPOPを変えるタイミングが来ているのかなと思いました。





仕掛け売りをスタートさせた時点では、出版社から送られてきたパネルをそのまま使い、手書きのPOPをつけてお客さまにアピールしました。

ただ、ボリューム陳列にパネルとPOPを付けた商品展開では最初にお客さまの目に入ってくるのはパネルです。その印象によってその場の印象が随分と変わってきます。


パネルの出来映えで売上が左右されることも多いと思います。売れている場合は最初につけたものをそのまま使い続けることもあります。

月間ベストの第二位に入っている『自分を変える習慣力』は、12月2日の仕掛け売りスタートから3か月間パネルを変えていません。

今回は仕掛け売り開始からほぼ1か月が経過すること、売上の先細り感が見えてきましたので、そろそろパネルを変えるタイミングが来たと判断しました。



パネルはデザインやレイアウトが同じパターンだと、キャッチコピーだけ変えても目に入ってくるイメージや受ける印象は変わり映えがしません。色遣いやレイアウトを変えるとガラッと印象が変わっていきます。

この時点で、これまで使用していた印刷物で作ったパネルに対し、二年目女子の文庫担当の仕掛け売りで成功している手書きのパネルを使ってみようと思いました。

手書きのパネルはまず色画用紙にマジックで文字を書き込んでいきます。POPの色遣いの基本は3色ですからパネルもそれに準じて色を使い分けます。

書きあがったものはラミネート加工します。ラミネートすると色がより鮮やかに浮き出てきます。それを使用済みのパネルに貼ると出来上がります。



印刷されたものと手書きではその印象が全く違うことがよくわかるでしょう。

『シャッター通りの死にぞこない』双葉文庫のテーブル一台展開で使用したパネルは、メインのキャッチコピーとサブの作品紹介コピーで構成されています。

 爆笑アウトロー小説
    ここに誕生

 心に何か残る読書がしたい方お断り
 ただただ面白いだけの小説です
 

メインコピーでこの作品の全体像を紹介し、サブコピーで手に取ってほしいお客様向けにおすすめの理由を説明しています。これが作品と読者をつなぐ言葉になっていると、売上が倍増していきます。



さて、『呼吸で心を整える』のメインコピーとサブコピーを何にするか決めなくてはなりません。もう一度作品をチェックして、作品と読者をつなぐことができそうなフレーズをピックアップしていきます。

・呼吸は自律神経なのに意識的にコントロールできる
呼吸は脳と深くつながっている
マイブレス式呼吸法は心の筋トレ
・呼吸法の基本は息を吐き切ること
・息を吐き切ると呼吸は自然と深くなる
・深い呼吸は落ち着かせ、集中力を高める効果をもたらす
・自分の心を思い通りに操る呼吸法
・意識して呼吸をコントロールすると自律神経もコントロールできる

もっとたくさんフレーズは浮かんできましたか、手書きのPOPに使ったコピーも含めて8つの候補に絞り込みました。この中からメインコピーとサブコピーを採用できればいいなと考えました。

この中で、著者の意図を読者に伝えるのに一番ふさわしいと自分が考えたのは下記のフレーズでした。これをメインコピーにします。


マイブレス式呼吸法は心の筋トレ

サブコピーは最初は深い呼吸を取り上げようと思いました。

呼吸法の基本は息を吐き切ること
息を吐き切ると呼吸は自然と深くなる

深い呼吸は落ち着かせ、集中力を高める効果をもたらす

メインコピーと並べてみるとつながりがあまり感じられませんでしたので考え直し、フレーズを並べなおし、言葉を調整したものをサブコピーにしました。

呼吸は脳と深くつながっている
意識して呼吸をすると
自律神経の働きもコントロールできる






2月末から出来上がった手書きパネルに変えました。色もデザインもレイアウトもそれまでのものとは全く変わりました。

事務所に持ち帰った取り替えたパネルを見てびっくり。コピーが変わっていたのです。ビジネス書の担当者に聞いてみると、今日出版社の方が来て変えたということでした。

色遣いやレイアウトが変わっていれば気付いたはずなのですが、コピーが変わっただけでしたので全く気付かなかったのです。手書きで販売ステージの印象を変えたいので、手書きパネルを使用します。Tさん、せっかく入れ替えてくれたのに申し訳ありませんでした。


2016年2月23日火曜日

ミニうり坊 作品と読者をつなぐ手書きパネル


手書きでパネルをつくる

ちくま文庫『命売ります』三島由紀夫著の仕掛け売りを始めたとき、文庫担当は出版社から送られてきたパネルを何の不満も持たず使用していました。でも、使われていたコピーは帯に書きこまれたものまったくと同じでした。

多面展示した作品の表紙はお客様の目に自然に飛び込んでいき、視覚的に作品のイメージを植え付けてくれます。表紙に使われているフレーズも無意識のうちに頭に入りこんでいるものと考えています。

表紙自体がアイキャッチャーとなり、作品そのものをイメージとして紹介してくれます。ですから、表紙とは違う情報をインプットして、その作品を手に取ってもらうことがPOPの役割だと私は考えています。

だから、POPには「表紙に書かれているフレーズは絶対使わない」ことをポリシーとしていましたので、これまで一度もしたことがないし手書きのパネルづくりに挑戦しました。



出版社の方がFacebookに投稿した文章がとてもよくこの作品を表現していると思いましたので、それを参考にしてコピーを考えました。

文豪の作品は実は面白い
まともに読んで面白い

         又吉効果というべきか
文豪作品の読み直しが始まった


三島由紀夫を文豪として表現しました。文豪=高尚というイメージがあります。読むのに二の足を踏むような方が多いはずなので、実は面白いというフレーズで印象を和らげます。

さらにその言葉を重複して使うことで、難しくない、親しみやすい作品としてのイメージを持っていただきたいと考えました。

芥川賞を又吉直樹氏が受賞しで圧倒的な部数が動いて文芸復活のイメージを作ってくれたことが背景にありました。そこから又吉効果という言葉を使いました。

文豪(=とっつきにくい)の作品にお笑い芸人の名前を使うことによって「手軽く読めるもの」という印象が与えられるのではないかと考え、読み直しが始まったというフレーズで文芸作品の新しいムーブメントを想起させたいと思いました。

そんな思惑で作ったこのパネルは思いの外当たりました。『命売ります』短期間のうちに300冊以上の販売実績を作ってくれました。

パネルもPOPも同じですが、イメージ通りの仕上がりにするためには気を使うことが多いです。失敗して書き直すのはとても嫌なものです。誤字や文字のはみ出しに細心の注意を払い、失敗しないように書いています。

手書きのパネルは色画用紙やマジックの選び方で色遣いが自由に楽しめます。相当気を使って書くためなのか、印刷仕様に比べて手書きパネルは見てくれる人に温かみが伝わるように感じます。

失敗せずにイメージ通りに完成でき売上が好調に推移すると、パネルのコピーが作品と読者をつなぐ役割を果たせたように感じられて、手書きパネルをつくる快感にハマってしまいます。そんなこともあって、その後何枚も書くことになりました。



2年目女子の仕掛け売りとコラボ

入社2年目女子は実用書を1年経験し、文庫担当に変わりました。最初はジャンルが変わって戸惑いが感じられたようで、新刊の事前注文や追加注文の部数のつけ方にばらつきが見受けられました。

ベテラン営業マンにおすすめされるとなんでも付き合ってしまう危うい印象も感じ取れました。彼女なりの仕掛け売りができるようになるにはまだまだ時間がかかるとその時は思っていました。

担当が変わって6か月が過ぎたころから文庫というジャンルに慣れてきたようです。自分なりの感覚で仕掛け売りに挑戦し始めていますし、だんだんと成果が表れてきたように感じます。

二年目女子の仕掛けと私が書いたパネルとのコラボで多少なりとも成功事例を作りましたので、その事例を少しご紹介しましょう。


2014年の12月に発売された文春文庫『侠飯(おとこめし)』を前任の文庫担当が売り伸ばしていました。

「何で売れているの?」と聞くと、「わかりません」という返事が返ってきました。私自身も何故売れているのかはよくわかりませんでしたが、
「やはり黒系の作品が良く売れるご当地銘柄なのだろうな?」と言うと、その言葉に反応してその気になったようです。

新刊発売から早い時期に追加注文をしましたので、出版社の担当からは「どこにもそんなに売れている店はありません」と言われたそうです。もしかしてオリジナル商品にできるかもしれません。

その時点では重版もままならず、少ない在庫をやりくりしながら売り伸ばしていきました。仕掛け売りを始めた時に、出版社の担当者から送られてきたPOPにはこんなコピーが使われていました。

読んでいるうちに思わずお腹が空いてくる
グルメ小説の新ジャンル ここに誕生!!

売場でのちょっとした立ち話で担当者がその気になり、売り伸ばしてしまった作品はわりと多くあります。その気になるポイントは雑談に隠れているのかもしれません。

『侠飯2 ホット&スパイシー編』が1年後の12月に発売になりました。今度は前任の担当から引き継いだ2年目女子がこの作品を売り伸ばすことになりました。

前作の実績に応じて事前指定を申し込むと、新刊発売の前に前作がまとまった数で入荷しました。数日後に搬入された新作と合わせてテーブル1台での展開がスタートしました。その時、仕掛け売りに欠かせないパネルが届いていませんでした。

2年目女子にパネルを作ってほしいと言われて、私の出番がやってきました。前作のPOPのコピーをちょっと手直しして色画用紙に書き込み、それをラミネート加工して、使用済みのパネルに張り合わせると、手書きのパネルは簡単に出来上がります。




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ここに誕生

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前作を横2列、縦3列の6面にし、続編を3列×3列の9面で陳列して、それなりのボリューム感を演出しました。

爆発的に売れているわけではありませんが、最初の作品が思いのほか売れ行きがよく、追加注文を繰り返しました。その勢いに引きずられるように続編も売れていきましたので、相乗効果が出たような形になりました。





その後、2年目女子の文庫担当は、出版社の担当者からおすすめされて『シャッター通りの死にぞこない』双葉文庫を100冊仕入れて仕掛け売りをスタートさせました。

この作品は2015年7月に発売されたものですが、初速は良くなくて、8冊入荷5冊返品というデータが残っています。

発売から2か月過ぎた頃から出版社の若手女子がしきりに仕掛け売りをすすめてきました。前任の担当は大きな部数での仕掛け売りは断ったようで、30冊という遠慮がちな部数で対応していました。

それなりに売れているようでしたが、小規模の仕掛け売りでは販売部数はあまり伸びていません。

2016年になって、出版社の若手女子から再度の仕掛け売りの提案がありました。前任から文庫担当を引き継いでいた2年目女子は、何店舗かの販売実績を聞いて売り伸ばしが可能だと判断したようです。

提案を繰り返す出版社営業担当の粘り強い営業スタイルも面白いですし、担当者によってそれに対する反応が変わってくることも傍で見ていて面白いと感じました。

1月中旬に文庫の拡販ステージでテーブル1台展開が始まりました。たまたまその場所で顔を合わせた時、「パネルが届いていないので書いてほしい」と2年目女子が泣きついてきました。

本を事務所に持ち込んでパネルのコピーを考えていると、著者が『侠飯(おとこめし)』と同じであることに気づきました。そこで手書きのパネルは似たテイストにしようと思いました。

本の表紙や中身をチラ見して、パネルのコピーとして使えそうなフレーズを捜しました。表紙を裏返して見ると、伝説のPOP職人のコピーが帯に書き込まれていました。面白いと感じましたので、そのフレーズを手直してサブコピーとして使わせていただきました。


 


 爆笑アウトロー小説
   ここに誕生

心に何か残る読書がしたい方お断り
ただただ面白いだけの小説です


「○○小説ここに誕生」というメインフレーズを両方のパネルに書き込んで統一感を出し、サブコピーでおすすめの雰囲気を出す作戦となりました。

この時点でそれぞれ違う場所に商品展開されていたものを隣り合わせの位置に移動させ、相乗効果をねらって陳列し直しました。

「黒系の作品はよく売れる」という言葉はこの作品にも当てはまりました。週売20を超える状況が続き、追加注文を繰り返すことになりました。

そして、充分な在庫が揃い売り上げが好調に推移していった時点で、2年目女子は「この作品だけ入口の拡販スペースに移動させ、週売30以上をめざす」と言いだしました。

100冊スタートで様子を見て、いけると感じたら積極的な展開に変えていく。こんなところに彼女なりの仕掛け売りの今の到達地点が見えてとても興味深く感じました










2016年2月18日木曜日

ミニうり坊 1000冊越えの作品をさらに売り伸ばす

パネルとPOPのコピーを変えて訴求力を高める

入社2年目女子の文庫担当は『ビッグデータ・コネクト』の1000冊突破を記念して、2016年2月からもう一度売り伸ばすことを決めました。その背景には、この作品の販売実績が全国第一位であると出版社担当者から知らされたことがありました。

単品の販売実績で全国第一位を取るということは中規模の店にとってめったにないことです。その地位を確固たるものにしておきたいという思いが生まれて、再度の売り伸ばしを決断したようです。

再度の売り伸ばしに当たって、一等地でのボリューム陳列を再構築しました。入り口の販売ステージのテーブル1台を確保して18面積みをつくり、同時に文庫売場のラックを一台を使って8面×5段の40面展開を開始しました。

大きな展開をするためには商品の量的な確保が必要です。出版社に追加注文をして250冊レベルの在庫を持つようにしました。

拡販のリスタートに当たり、POPパネルのコピーをどうするのか、という課題が浮かび上がってきました。切り口を変えることによって新鮮さを保ち、お客さまへの訴求力を高める必要があるからです。

拡販のリスタートをした時点でパネルのコピーは下記のフレーズが使われていました。


担当者おすすめ
ITを知り尽くした著者が
完成度の高い警察小説を書いた
それがおすすめの理由です

それまで使用していたPOPのコピーを色画用紙に手書きし、ラミネート加工したものをパネルに貼って体裁を整えました。ラミネートすると手書きの文字の色味がはっきり出ますので、全体的に見やすくなるし、雰囲気もよくなります。

POPのコピーをパネルに使用してしまいましたので、違うコピーで手書きPOPを作成し直しました。思いの外このコピーが当たったように思います。


2015年4月10日発売
10か月と10日経過して
この店単独で
1000人のお客さまに
お読みいただいております

再度の拡販では2か所での商品展開になりましたので、店の入り口にはおすすめの理由を明記したこれまで使用していたパネルを使い、大きな商品展開を開始する売り場内のラックには新たなパネルをつくり直しました。

ラックの大きさに合わせてサイズを調整しましたので、通常使うパネルよりもかなり横長のものが出来上がりました。つくり直したパネルのコピーは下記のようになりました。

  ありがとうございます。
  おかげさまで1000人のお客さまに
  お読みいただいております
       当店文庫担当 イチオシ銘柄

パソコンで作成しましたのでカラーのパネルになりましたが、色あいが地味で、陳列された場所に並べてみるとちょっと沈んでしまう印象がありました。そこで作品の下に敷く布の色を変え、POPの色遣いもそれに合わせて再度調整し直しました。

大きな商品展開にパネルだけでは賑わい感が出ませんので、手書きPOPを2種類作成しました。ひとつは全国第一位を強調しました。


       おかげさまで
       全国第一位に
       なりました



もう一つのPOPには日付と実数を記入したものです。シンプルですが事実を反映した数字の訴求力が強くなったように感じられました。

      2016年1月末現在
      当店単独で
     1045人の方に
      お読みいただいております

商品の展開を大きくし、パネルやPOPのコピーを書き換えたことで売上が好調に推移し、週売30以上が復活しました。そうなると売上の伸張とともに数字を変えてさらに訴求力を高めることができます。

  2016年2月15日現在
  当店単独で
  1116人の方に
  お読みいただいております

こんな風に定期的にPOPの数字を書き換えていくと、このPOPを見ること自体を楽しんでいただけるようになるのではないかと思っています。

2016年2月16日火曜日

呼吸で心を整える セカンドステップ

仕掛け売りの広がりをつくる
斉藤塾はベストセラーをつくることを目標として活動を行っています。7万部でも8万部でもベストセラーと言ってもいいのかもしれないのですが、誰もがベストセラーだと納得できるのは10万部を超えてからだと思っています。

「初速がいい」「発売即重版」「1か月で2万部到達」そんな言葉に出合うことはよくあります。そうした作品を取り上げて塾生たちは10万部計画にチャレンジしました。その結果、4割以上の計画が成功しています。

10万部計画のストーリーは4つのステップから成り立っています。簡略化して表現すると下記のようになります。
1.     仕掛け売りの拠点をつくる
2.     仕掛け売りの広がりをつくる
3.     新聞広告を掲出する
4.     仕掛け売りの全国的な展開をつくる

最初のステップは特定の店で影響力の強い売上を作ることから始まります。取り上げた作品のメインターゲットを特定し、そうした客層が多く集まる店の一等地で売れる商品展開をつくると拠点づくりは成功します。

影響力のある売上とは小規模の店なら週売10冊、中規模なら週売30冊が目安になります。売れていることが伝わりやすくするために、その店のベストテンにランクインすることを目指します。

多くの店でベストテンコーナーを作っています。そこに作品が展示されると売れていることが視覚的に伝わります。ジャンル別週間ベストの第一位を5週連続して獲得した作品はほぼ間違いなく10万部計画を成功させることができます。

特定の店で影響力の強い販売実績を作り、仕掛け売りの拠点ができると、次のステップへ移行します。拠点づくりで成功したパターンを水平展開すれば、仕掛け売りの広がりは容易にできます。

拠点での商品展開のスタイルや販売実績を紹介すると、その作品が売れていることが具体的に書店員に伝わります。そして、多くの書店から「私も売ってみたい」という声が上がるように仕向けていきます。

仕掛け売りの広がりをつくる営業活動では「売れていることが分かる注文書」の出来具合がカギとなります。商品展開のイメージを写真で伝え、販売実績を数字で表現し売れている状況が見えてくると「受注しやすい注文書」になっていきます。

書店員は他店の情報を気にかけていますし、特に動向を注目している店は定期的にチェックしています。そうした店の情報が掲載されると書店員の対応も全然違ってきて、「うちの店でも挑戦してみたい」と考えだすのです。

『呼吸で心を整える』の発売から約一か月が経過した段階での販売実績を調べていただきました。ここから仕掛け売りの広がりを作る道筋を考えてみます。
ベストテンの順位
1.     丸善丸の内本店
2.     紀伊国屋書店梅田本店
3.     有隣堂恵比寿
4.     紀伊国屋書店新宿本店
5.     啓文堂書店渋谷店
6.     BX品川サウス
7.     三省堂書店名古屋高島屋店
8.     三省堂書店池袋本店
9.     紀伊国屋新宿南店
10.  BX新宿南口

このデータの特徴的な点は大阪、名古屋と山手線の東西南北の主要ターミナル駅を網羅していることです。エリア的な偏りがないことから、どの地域でも売れる可能性を持った作品であると判断できます。

全国的に有名な書店が上位にいますので、そうした店の売れ行きに敏感な地域ごとの一番店や有力店が仕掛け売りの広がりをつくる有力候補となるでしょう。仕掛け売りの提案をして実際に成功させることは十分可能なように思います。

ベストテンには1000坪クラスの大型店、仕掛け売りが得意な200坪クラスの店と駅構内の好立地の店が入っています。規模的には大小問わず好立地な店で初速が出ていると判断してよさそうです。

ベストテンに入っている店はそれぞれチェーン店の中で主要な地位を占めています。その店の販売データや商品展開のやり方をチェーン内他店に広めていく取り組みをすれば、複数店舗に仕掛け売りの広がりをつくることができます。

また、チェーン店内の競争意識を煽ることも戦術の一つとして使えるでしょう。また、チェーン内の複数店舗で実績を上げると本部一括の仕入れがしやすくなりますので、チェーン一括での取り組みを本部担当者に提案することも可能となります。

ベスト5とそれ以下では冊数の違いが目立ちます。ベスト5に入っている200坪クラスの2店舗が1000坪クラスの大型店とそん色のない販売実績を上げています。そこでは何らかの形で仕掛け売りをしていると想像できます。

仕掛け売りの好きな書店担当者は彼らの取り組みに興味を抱いていることが予想されます。そうした店にこの2店舗の取り組みと実績を紹介すれば、多くの店で仕掛け売りが始まることでしょう。

ベストセラーを作るための意図的な取り組みは、作品のターゲットとする客層に合わせてエリアや店を選んで拠点づくりや仕掛け売りの広がりをつくります。
ただ、この作品の場合、作品自体に客層の広がりがあるように感じますので、エリアや店を選ばなくても仕掛け売りは可能なように感じます。


仕掛け売りが得意な店は多くあります。そうした店の担当者に提案を重ねていけば仕掛け売りの広がりはつくることができます。担当者への活きのいい提案によって彼らのやる気を引き出すことが重要だと思います。

この作品の特徴的な点は、「呼吸」という誰もが普段自然に行っている行為が作品のテーマであることです。非常に汎用性が高いテーマですから、ビジネスだけでなく、スポーツや武道と絡めたり、ヨガや瞑想、健康法と絡めたりすることが可能です。

新書というサイズと価格も提案の根拠となり得ます。新書は過去ベストセラーを多く出しています。どんな切り口を前面に出していくかで店を選ぶことができますし、提案する際のキャッチコピーの出来が成果に影響を与えるかもしれません。