2015年8月29日土曜日

物語ビジネスダービー 3

組織の拡大
2008年に入るとうり坊の忙しさはピークを迎えたようだった。おすすめ文庫全店フェアの拡販キャンペーンは佳境を迎え、2か月で10000冊を」クリアしたしその後も売れ続けている。
3月に開始予定の雑学文庫ダービーの企画発表を兼ねて1月下旬にはうり忘新年会を実施した。だんだんと人気が高くなったうり坊の新企画に総勢70名が参加して熱気の溢れる新年会となりました。

おすすめ文庫全店フェアは3ヶ月で15000冊を超えるイメージが膨らんだ頃、10000冊突破記念のパーティをしようという声が上がり、雑学文庫ダービーが始まったばかりの時期に著者及び出版社の方々を交えたパーティが行われた。

スケジュールを調整して4月開始と決まったビジネスダービーの企画書は2月末までに作成し、少なくとも3月上旬には顎案内ができるようにし、ノミネート作品を募集しなければならない。

そんな忙しいスケジュールをこなしていく中で、
「ビジネスダービーの出走数が9頭では少ない」
という意見が頭から離れませんでした。
ビジネス書の会に新戦力を加えるという欲求は丸山の頭の中でくすぶっていましたし、店の店長の発言を素直に受け入れようとする気持ちもありました。

「うちも誘ってくださいよ」
そういってくる出版社営業マンもありましたので、何社かに声を掛けて探りを入れましたが、どの出版社も
「ぜひ参加させてください」
という色よい返事ばかりでした。

結果として6社を加え15社でビジネス書の会を運営していくことに決めました。なぜ15社でとどめたのかは丸山自身もよくわかっていなかったのですが、野放図に広げる必要はないし、順次拡大が戦略としては正しいと思ったことが原因でした。

一気に参加社を増やしてしまうとその時はいいのだろうが、後が続かなくなり、進歩のない停滞が起きてしまうことを恐れました。まだ発展途上なのだと自分自身に言い聞かせたい心理が働いたのかもしれません。

第二回親善ボーリング大会
3月上旬に第二回ビジネスダービーの企画書を参加予定の出版社15社宛にメールで発送しました。新たにご案内を送ったのはフォレスト出版、日経BP、すばる舎、大和書房、インデックスコミュニケーションズ、あさ出版の6社でした。

全社から参加のお知らせと登録署名が送られてきました。今回は4月開催ということを意識して、「自己啓発」と「リーダーシップ」の作品のテーマを絞ることにしました。
新年度は新入社員、昇格者、部署異動、新たに部下も持つ人たち向けの需要が増えます。この時期は新たな環境に立った人たち向けの自己啓発や、必要に迫られて読むリーダーシップ系の作品が売れるテーマになります。

また、作品の刊行時期が半年前以前の作品の限定することも条件に加えました。発売後の今、売れている作品を排除して、既刊本の発掘を企画のテーマに加えました。その結果、しっかりとおすすめできる内容を持った既刊本が営業マンから推薦されました。

「ボーリング大会はいつですか?」
そんな問い合わせが相次いで寄せられましたので、ダービー開始直前の3月下旬に行うことにしました。親善ボーリング大会で気勢を上げて、一気にビジネスダービーに突入しようと考えてのことでした。

今回のボーリング大会では前回実力を見せつけてくれたメンバーが不参加でしたので、新たなヒーローが生まれました。第一位は日経新聞出版社が獲得しました。女性参加者を引き連れて参加し、ハンディをうまく活用した形になりました。

仕掛け売りの権利は女性担当者Hさんの担当エリアにあるA店で行使することになりました。HさんはA店の店長とその場で話し合い、
「FBIアカデミーで教える心理交渉術」
を取り上げることを決め、4月早々に150冊搬入する手配をしてしまいました。

日本実業出版社がK店で、フォレスト出版はH店でそれぞれ店の一等地での仕掛け売りの権利を獲得しました。日実は3点での同時拡販を提案し認められたようです。
フォレスト出版のSさんは
「英語は逆から学べ」
100冊搬入して仕掛け売りをスタートさせています。その他にも3社が仕掛け売りの権利をそれぞれの店で獲得しました。

第二回ビジネスダービー
41日スタートの第二回ビジネスダービーに出走する作品が決まりました。

ダイヤモンド社 『マインドマップ読書術』
日経新聞出版社 『さあ、才能に目覚めよう』
東洋経済新報社 『初心者のための「日経新聞」の読み方最新版』
日本実業出版社 『だから部下がついてこない』
日経BP    『営業の赤本』
PHP研究所  『論理的な考え方が身につく本』
明日香出版社  『雑談力』
かんき出版   『35歳までに必ずやるべきこと』
三笠書房    『話しができる男、バカになれる男、男が惚れる男』
フォレスト出版 『あなたも今までの10倍速く本が読める』
あさ出版    『「すぐやる人」になれば仕事はぜったいうまくいく』
インデックス~ 『1週間の習慣』
すばる舎    『人は「暗示」で9割動く!』
大和書房    『自分の小さな「箱」の中から脱出する方法』
中経出版    『論理的な話し方が身につく本』

15作品が並ぶとインパクトのあるフェアが開催できるような気がしてきました。テーマは「自己啓発」と「リーダーシップ」に絞ったはずでしたが、いざノミネートされた作品を見てみると自己啓発系の作品ばかりでした。

41か月間の販売実績は1750冊を超えましたが、1日平均は58冊でした。15作品の参加で投入冊数は4635冊でしたので、1ヶ月時点での消化率は38%です。1点当たりの納入数を少し抑えたのですが、それでも少し不満の残る消化率でした。
それでも5月末までの2か月間の販売冊数は2500冊弱でしたので消化率は54%に上がっています。まずまずの数字かなと思います。

新規参入したフォレスト出版の推薦作品は、当時勢いのあった勝間さん推薦帯が功を奏して、唯一の200冊越えで第一位を獲得しました。それ以外では7位に日経BPの作品が入り、10位以降に残りの4社が集中していました。

それぞれ推薦していただいた作品は既刊本としては売れ筋の作品だったのですが、15社での競合の中で売上を取ることはとても難しかったようです。

順位
作品別順位
1位 『あなたも今までの10倍速く本が読める』フォレスト出版
2位 『論理的な考え方が身につく本』PHP研究所
3位 『雑談力』明日香出版社
4位 『話しができる男、バカになれる男、男が惚れる男』三笠書房
5位 『だから部下がついてこない』日本実業出版社
    以下省略

唯一の200冊越えのフォレスト出版の推薦作品が他の作品を圧倒して、新規参入でありながら断トツの第一位を獲得しました。
前回第一位を獲得した東洋経済新報社は新人向けの自己啓発書を取り上げて参戦しましたが、新入社員の購入は少なかったようで、期待は見事に外れて14位に沈みました。

前回3位のPHP研究所作品が2位に入り、前回2位の三笠書房の作品が4位に入っています。このあたりは企画の趣旨に合った商品で売りやすい作品を選んだ成果が表れているようです。
健闘が光ったのが前回の6位明日香出版社と前回最下位に沈んだ日本実業出版社でした。明日香出版社はPOPの工夫がよくされていましたし、営業マン達のやる気が強く表れて、3位に入っていますし、唯一のリーダーシップ関連の作品を選んだ日本実業出版社が5位に入っています。

店別の順位
1位 F店
2位 K店
3位 H店
4位 M店
5位 A店

店別の販売実績では前回1位のA店が5位に沈み、前回3位のF店が1位に入り、K店は安定の2位の座を維持しています。全店企画ではどんな企画でも常に1位を争っているF店は、気合が入っていて店として奮起した模様が伺えます。
3位のH店、4位のM店は両店とも初めて5位以内に入っています。商品の展開場所と陳列の工夫が見えていました。どこで商品を展開するのか、どのようにアピールする陳列ができるのか、これが売上を上げる決め手だとつくづくと思わされました。

表彰
グループ別順位
20冊展開のAグループ F店
10冊展開のBグループ S店
7冊展開のCグループ O店
5冊展開のDグループ N店

全グループ共に第一回ビジネスダービーとは違った店が入賞しています。モチベーションの高い店が上位に入ってくるし、工夫が見えなくなると下位に沈んでしまう傾向が伺えました。
店別表彰では販売実績第一位のF店が選ばれ、グループ別の第一位とともに無条件で選出され、前回より順位を上げたH店とM店が特別賞を受賞しました。

出版社表彰は
販売冊数第1位    『あなたも今までの10倍速く本が読める』
POPコンテスト1位 『雑談力』
特別賞        『論理的な考え方が身につく本』
リベンジできたで賞  『だから部下がついてこない』

POPコンテストは2回目ともなるとそれぞれの出版社が力を入れて利器札が揃うようになりました。何店舗かの店では店の担当者が出版社に負けじと気合を入れてPOPを作成していましたので、展開場所での陳列の賑やかしになっていたようです。

今回はいずれ出版社からも力作が送られてきました。コンテストではあさ出版の切り文字を使った仕掛け絵本的なPOPと、ハレパネの厚みを活かして立体的に作った雑談力の文字が浮き出た明日香出版社のPOPの2点に絞られました。
最終的にどちらかの作品に絞ろうということになって、POPの効果を売上で判断することにしました。その結果3位入賞した明日香出版社の『雑談力』のPOPが第1位に決まりました。

特別賞は前回の3位からワンステップ上昇して2位に入賞したPHP研究所の『論理的な考え方が身につく本』が順当に選ばれました。もう1点は4位の『話しができる男、バカになれる男、男が惚れる男』と、5位の『だから部下がついてこない』の争いになりましたが、前回最下位の屈辱を味わった日本実業出版社に徳熱賞を与えようということになり、「リベンジできたで賞」を与えることになりました。

ご褒美
「おすすめ文庫全店フェア」「雑学文庫ダービー」それぞれ第1位作品に山村書店第一位の帯を巻いて拡販したところ記録的な販売実績を上げていました。その点を考慮して、
「ビジネスダービー第1位を売り出そう」
という考えが浮かんできました。

1位のフォレスト出版の営業部のSさんに声を掛けたところ
「よろこんで!」
という返事をいただきましたので、拡販キャンペーンをすることになりました。文庫の拡販キャンペーンではそれぞれ5000冊の初回投入でスタートしましたが、単価が2倍以上のビジネス書ではどれほど売れるものかはわかりません。
月間300冊売れればビジネス書の月間ベスト第一位を取れる状況でしたので、それを参考に部数を決めることにしました。

58日にフォレスト出版を訪問して、Sさんと相談することにしました。二人が合意した部数は1000冊でした。初めてのことでもあり、テスト的な意味合いも含めての数字となりました。

際一位帯は文庫と同じスタイルで作成しようということになり、メールで何案かを送っていただき、本部スタッフの協力を仰ぎながら、最終案を社長に見せて516日に最終決定をしました。

5月の最終週までに帯付きの商品を搬入していただき、67月の2か月間拡販キャンペーンをすることになりました。
最初の週は1日平均20冊以上売れていましたが、ビジネス週間ベストの第一位を連続して獲得して、最終的に800冊まで部数を伸ばすことができました。山村書店の単行本としてのオリジナル商品としてはまずまずの出足だったように思います。

1回目のビジネスダービーでは1位から5位までの出版社を招待してJリーグのサッカー観戦の会を催しましたが、今回は西武ドームのBOXシートのチケットが手配できたようですのでそれを使うことになりました。
57日に西武対日本ハムにはフォレスト出版、三笠書房、PHP研究所の3社、64日の交流戦西武対横浜ベイスターズには明日香出版社と日本実業出版社をご招待いたしました。同日にはPOPパネルづくりや他の商品の手配について気づかいの良いダイヤモンド社のH氏を丸山の独断で追加メンバーに加えました。

2015年8月27日木曜日

物語 ビジネスダービー 4

波及効果
ビジネス書のチェーン全体の売上の対前年比を既存店ベースで算出してみました。
2007年 4月  101.3
     5月   98.3
            6      99.8
           7月   103.1
    8月  101.8
    9月  103.0
     10月  105.5
     11月  109.7
     12月  103.4
2008   1月  112.8
    2月  115.8
    3月  108.1
    4月  107.4
    5月  109.4

ビジネス書の会が立ち上がった20077月から既存店ベースの売上対前年比は上回ったまま推移しています。20081月、2月はベストセラーが出ていますので二桁以上の伸びになっています。

この間、会員社のダダイヤモンド社、東洋経済新報社、PHP研究所、日経新聞出版社などからベストセラーが多く生まれてこの売上に貢献しています。

ボーリング大会とビジネスダービーをセットにした活動を続けてきた効果は確かにあったと判断しています。売れ行き良好書の手配がそれ以前に比べて強めにできるようになりました。
同時に、出版社営業マン、仕入部のバイヤー、店担当者の三者のコミュニケーションが少しずつ良くなっていることも実感しています。

ビジネスダービーで一回目の失敗を反省して二回目のリベンジしようと考えた方、前回は1位になったのに今回は下位に沈んでしまった方、両方とも下位に沈んでしまっている方も、第1位を取れなかった皆さん全員が、次回のリベンジを期しているようにも感じられます。
楽しさと競争とご褒美が入り混じった企画は、参加している皆さん全体の雰囲気を良い方向に導いてくれるような気がしています。

ビジネス書の既存店ベースの売上対前年比は18か月連続で対前年を上回り、19ヶ月目にそれが途切れました。とても悔しい結果として受け止めましたが、上回ったり、下回ったりを繰り返していたものが連続18か月上回ったとこは特筆できることだと思います。

若手営業マン
チェーン担当の営業マンはベテランもいれば、若手もいます。そんな中でビジネスダービーに付き合うことは若手にとっては色々な意味で勉強の機会を与えられているように感じました。

若手営業マンにとって、ビジネスダービーに参加して他社のベテラン営業マンとの競争を勝ち上がっていくのはとても大変なことのように感じます。

「売れる作品を選ぶこと」
「売れるPOPを書くこと」
「営業の力で売り伸ばすこと」
これらのことを確実にこなしていかないと戦えませんし、ましてやベテランを上回ることはとても難しいことのように感じます。

自社の作品の中から売れ筋商品を発見してそれを単純に書店でおすすめするだけでは勝ち上がっていけません。もっと書店でお買い物をなさるお客さまに強いインパクトを与える何かが必要な気がします。

一気に力をつけることは難しいでしょうから、本部スタッフ、店の担当者、同業他社の営業マンの荒波にもまれながら、一歩ずつ前進していきましょう。

ラッキーな勝利は多くありますが力をつけようとする営業マンにラッキーは必要ありません。今の負けを悲観することもありません。

営業マンの地力をつけることもねらっているビジネスダービーという企画は、なかなか面白いものなのです。ここを勝ち抜いて1位を勝ち取れるようになると、営業マンとしての力を競合他社の皆さんにも認めていただけるようになるでしょう。

ただ、企画そのものもステップアップしていくのが丸山のやり方ですから、それに対応できないようでは、何時までたっても下位に沈んだままで終わってしまうことになるのかもしれません。

若手営業マンは丸山に言わせれば、まだまだ遠慮しているように見受けられます。ボーリング大会で入賞すると、仕掛け売りの権利は公式に与えられますが、非公式に店の担当者にアピールすることはできるはずです。
店の担当者にアピールして、担当者をその気にさせることができれば、誰でもいつでも仕掛け売りのチャンスをつかむことができます。

自社の商品の売れ行き上位3店にお菓子を届けていただくようにお願いしているのは、ただ、単に感謝の意を店の担当者に伝えてもらいたいからだけではありません。
お菓子を届ける際に店長やビジネス書の担当者と話す機会は持てるはずですので、その場を利用してコミュニケーションを密にとっていただくことを同時に願っているのです。

店を訪問して店長やビジネス書の担当者に会って、お菓子を手渡す時に
「ありがとうございました」
だけで終わるようでは営業マン失格と言われても仕方がないと思います。

ボーリング大会で入賞して仕掛け売りの権利を手にしていなくても、話をする機会を与えられたその時にアクションを起こせばいいことなのです。
自社の商品をたくさん売っていただいた店はほとんどが売れる店に限られます。せっかくのチャンスを逃してはなりません。

お菓子を持っていった時には感謝の気持ちが店の担当者にも芽生えている筈です。そんな時に仕掛け売りの話しを切り出せば、会話が成り立ちやすい条件が揃っているはずです。そんなチャンスを逃す手はありません。

ボーリング大会で獲得した仕掛け売りの権利はすでに行使していてひと段落しているかもしれませんし、権利を使う店でない場合もあります。そうした時に
「自社のこの作品の仕掛け売りをお願いできませんでしょうか」
と一言添えるだけでもチャンスは出てくるでしょう。

営業マンはあらゆる場面で自分なりの主張ができなければ、成果はなかなか上がってきません。その用意は周到に準備しておかなければなりません。
仕掛け売りの提案をして合意に至らなくてもそれはそれで仕方のないことなのですが、何の提案もせずにお菓子を届けるだけで終わるようなら、営業マンはやめた方が良いのかもしれません。


ビジネスダービーの推移
ボーリング大会を開催して、その表彰式の盛り上がりの中でビジネス書の会はスタートしました。当初の会員出版社は9社でした。その会が主催して行ったビジネスダービーは、営業担当のおすすめを前面に押し出して、「今こそこれを読め」をフェアタイトルとしました。

この企画の反響が大きく、参加させて欲しいという要望が多く集まったため、ビジネス書の会は会員出版社を6社増やし、翌年の4月に第二回ビジネスダービーを行いました。
この時は勝間和代さんの推薦帯を巻いて売れていた『あなたも今までの10倍速く本が読める』が一位になっています。一回目、二回目共に売れている作品が一位になり、二位や三位に出版社の営業担当者が苦心して選んだおすすめ作品が入賞しています。

第三回のビジネスダービーは9月に行いました。この間の販売実績を整理すると、第一回は売上合計1,329冊、1日平均43冊。第二回は売上合計1,751冊、1日平均58.3冊。第三回は参加店舗が3店舗増えて、売上合計1,682冊で1日平均56.1冊となっています。

第一位帯を巻いて行った拡販キャンペーンでは第二回が800冊超えで、第三回は少し落ちて600冊超えになりました。
春と秋の年2回の企画の実施と、それに伴う出版社との関係性の改善が功を奏し、チェーンとしてのビジネス書の売上が安定して、既存店ベースの対前年比が16カ月連続クリアするまでになりました。

出版社ごとの販売実績を競い、店の規模ごとにグループ分けをしてグループごとの順位を競い、POPコンテストを含めて多くの表彰を行い、ご褒美もできる限りの範囲で皆さんが楽しんでいただけるような内容で用意しました。
こうした企画の工夫で、参加出版社はもとより、店のビジネス書担当者のモチベーションも高くなったことが良い結果を引き寄せたと考えています。

だんだんと企画の盛り上がりが大きくなるにつれて、参加者がヒートアップするケースも出てきました。第三回では第1位作品の著者の作品をセミナー参加者が買いに走るという疑惑が浮かび上がりもありました。

ただ、その時点では著者サイドのお買い上げは想定していませんでしたので、そ出走作品のお買上に対するルールを定めることにしました。

統一企画としてのビジネスダービー
参加者のヒートアップが激しく目立つようになって、企画そのものを見つめ直すべきだと声が上がりました。出版社にとって第一位を得ることは名誉なことですし、第一位を獲得すると波及効果があって10万部以上を狙えることもわかってきました。

これまで店の担当者や出版社の営業担当の様々な要求に応じる中で、うり坊として年4回の全店フェアを行ってきました。おすすめ文庫全店フェア、雑学文庫ダービー、春と秋のビジネスダービーです。
ヒートアップを防ぎ正しい競争をする企画を運営するには何が必要なのだろうか。そう考えて、ルール作りと運用基準の統一が必要なのだろうと考えました。

そんな時に、一部のメンバーから文芸書の企画もやって欲しいという声が上がりました。世間的には文学賞の方が注目度は高いし、全店企画として文芸書を取り上げることは意味があることだと以前から考えていました。
そのため、秋、春と実施してきたビジネスを春だけにして、秋は文芸書に充てることにしました。

3月の雑学文庫、4月のビジネス書、9月の文芸書、10月のおすすめ文庫で全店フェアを実施し、それぞれ1か月空けて、拡販キャンペーンを2か月間行う全店企画の年間スケジュールが変更されました。

それぞれの企画で独自性を持たせつつ、企画の運用方法は統一して、表彰も一本化し、300人規模で年1回行っている出版社懇親会の席で、4種類の企画の第一位作品の出版社を同時に表彰することにしました。
ちなみに文芸書の新企画は、最初の企画書だけは慣れている丸山が書いて、運営実務は文芸担当のバイヤーに任せることにしました。

第四回のビジネスダービーは他の企画と同じ運営方法とすることになりましたので、主催はビジネス書の会でなく、本社仕入部となり、参加出版社もすべての出版社に門戸を広げオープンでの参加となりました。

企画の趣旨については「今こそこれを読め!」という精神は、出版社からのノミネートの中だけで納めるようにし、店担当者からもノミネート作品を募集しました。

応募した作品を持ち寄り、店のビジネス書担当者を集め選定会議を実施し、ビジネスダービー出走作品を選定するようになりました。

スタート
店の規模によってA~Dまでの4つのグループに分けて段階別に部数を設定した配本は従来と同じパターンを使っていました。店ごとに商品の展開場所や陳列方法はバラエティに富んでいました。

全店統一パネルはタイトルパネルだけで、あとは店の工夫で陳列は行われますが、そこに出版社の営業担当が訪問して、店の担当者と話し込んで、自社の作品がより売れるような工夫を加えていきます。

各出版社共にスタート時点から熱の入った営業をしていただきました。中でも積極的に店周りをして、必要な追加注文や、展開方の支援、POPの提供などを行っているのは、ダービーを経験しているの出版社の方達です。

彼らに負けじと新規参入した出版社の営業マン達も店を回り、店の担当者と話し込みをするメンバーも多くみられました。
彼らの頑張りに対して店の担当者もそれなりの対応をするようになります。店の一等地での商品展開が多くなり、POPをお使った陳列もうまくなって、それまでのビジネスダービーでは考えられないペースで売れていきました。

スタートから向こう正面を過ぎ、第3コーナーを回るあたりから、上位の作品のつばぜりあいはとても激しくなり、僅差での競り合いが続きました。全体の動きが良くて、このままペースでいくと、上位入賞作品は一気に300冊超えが狙えそうな勢いがあります。

最終コーナーを回り、直線に入っても激しいデッドヒートが続き、かたずをのんで見守っていると、最後の二日間で売上の異常値が発見されました。それまでの売上推移とは違った極端な数値になっています。事務局で調査することになりました。

結果は勇み足としか考えられません。最終日の三日前にホームページ上で檄が入ったようです。関係者がフェアを展開している店を訪れ、買い上げに走って一気に売上を押し上げてしまい、最後の二日間で逆転したことが判明しました。

最終的な判断は、フェアの期間を二日間だけ前倒しして販売実績を集計し、異常値を排除した形で順位を確定ことになりました。それでも一位と二位の作品が300冊を超え、三位も200冊を超えています。フェア全体の販売数も2,000冊を超える新記録となりました。
最終確定した第一位は『なぜあの人は人前で話すのがうまいのか』になりました。

拡販キャンペーン
これまでの全店フェアでは第一位作品にだけ第一位帯を巻いて拡販キャンペーンをしてきました。それが効果を発揮して売上のブレイクスルーを果たしてきましたが、この回のビジネスダービーでは新しい試みをすることに決めました。

全店フェアそのもので2000冊を超える新記録をつくり、一位と二位が300冊を超え、三位が前回までならば一位並みの200冊越えでした。そこで一位から三位までの3作品を二カ月間の拡販キャンペーンの対象作品とすることに決定しました。

第一位の『なぜあの人は人前で話すのがうまいのか』は従来通りに第一位帯を巻いて拡販します。
第二位の『初めて部下を持つ人のためのリーダーシップ10のルール』も最後の最後まで健闘していました。たまたま過剰反応で買いに走った方々がいて異常値が出たと判断して、第二位帯をつけて拡販することを決めました。
第三位の『残業ゼロ!仕事が3倍速くなる ダンドリ仕事術』は注文のロットの関係で帯は作れないという返答がありましたので、帯なしで拡販キャンペーを始めることにしました。

三位までの入賞が確定した出版社を訪問し、ビジネスダービーの順位に関する説明をさせていただき、併せて拡販キャンペーンの相談を行ないました。
その結果、第一位作品は1,000冊、第二位作品は650冊、第三位作品は400冊の仕入れで、拡販キャンペーンはスタートしました。

1か月の間を置いて6月からスタートした拡販キャンペーンでは、3作品同時拡販キャンペーンということで拡販スペースの確保と商品のお客さまへのの訴えかけが難しいらしく、苦労を掛けてしまったと思いましたが、それぞれの作品は順調に販売実績を作っていきました。

特に第一位作品は2か月目の7月1か月間、私鉄のドア横ステッカー広告を掲載していただきましたので、広告効果も相まって、かつてない販売実績が作り出されました。
2か月間で1700冊弱、初回投入冊数に対する消化率は165%超えという驚異的な新記録が生まれました。


二位作品も大健闘でした。2か月間で500冊弱の販売事績で、消化率は70%を超えました。三位作品は約300冊で、消化率は80%を超えています。3点トータルでも2500冊弱という実績となりました。

2015年8月21日金曜日

物語 ビジネスダービー 2

スタート
各店ごとの販売コンクールでの公平性を考慮して店の規模ごとに4段階に分けて配本数を設定することにしました。

内訳は
Aグループ6店舗  1点につき20冊、合計180
Bグループ11店舗 1点につき10冊、合計90
Cグループ11店舗 1点につき7冊、合計63
Dグループ6店舗  1点につき5冊、合計45
これを全店合計すると1点当たり337冊の納入ということになります。

表彰対象
グループごとの販売実績第一位(参加書店向け)
作品の合計販売実績第一位(参加出版社向け)
POPコンテスト第一位及び特別賞(参加出版社&参加書店)

これとは別に
各出版社の販売実績第一位から三位までを対象に、お菓子の詰め合わせを出版社の方から該当する店舗に届けていただくようにお願いしました。

各出版社からノミネートされた作品
ダイヤモンド社   『20代のいま、やっておくべきお金のこと』
日経新聞出版社   『君はなぜ働くか。』
東洋経済新報社   『レバレッジ・シンキング』
日本実業出版社   『てっぺん!の朝礼』
PHP研究所    『道をひらく』
かんき出版     『とことんやれば、必ずできる』
中経出版      『幸運を呼び寄せる朝の習慣』
明日香出版社    『絶妙な「集中力」をつける技術』
三笠書房      『頭のいい人の短く深く眠る方法』

9社から提出された作品はほとんどが自己啓発系の作品が多く、一部の作品にはビジネスノウハウ的な作品が含まれていた。そして、各作品に共通しているのが出版社の営業マン達が自信を持っておすすめする作品だったし、今売りたい作品が並んでいた。
830日には店に商品が到着して準備が整い、91日からビジネスダービーは始まった。

結果
91日からビジネスダービーは始まりました。さっそく店を回ってみると、A店ではレジ横の柱の前のテーブル1台を使って商品が展開されていました。場所といいボリューム感といい文句なしの展開でした。
店によっては消極的な展開や、あまり目立たない場所での展開もありましたが、全体的にはいい感じでの商品展開ができていました。

途中経過は一週間のサイクルで販売実績を集計し、皆さんにメールでお知らせしました。最初のうちは興味を持って見ていただいていたのですが、終盤になって体制が決まってからは下位に低迷していた出版社には針のむしろに感じた方もいらっしゃったようです。
上位5社ぐらいまでは白熱したレースでしたので、データを催促されるケースもありました。

始めのころは『レバレッジ・シンキング』と『道をひらく』が突出して売れていました。両方ともその時の売れ筋作品でしたから「そんなものかな」という気もしましたが、途中から『頭のいい人の短く深く眠る法』と『20代のいま、やっておくべきお金のこと』が追走してきて首位争いが面白くなってきました。

店別の販売実績ではいつも企画のたびに頑張っている沿線中核都市のF店がもたもたした走りをしていました。それに反して都心のターミナルにあるA店が独走気味で強い販売実績を上げていました。
都心のターミナルに隣接した小さな駅の小型店の2店舗が健闘していました。客層が一般的な文庫と比べ、ビジネス書は商材としてまた違った側面を見せてくれているような気がしました。

一か月間のビジネスダービーはつつがなく終了し、翌月すぐに最終結果を集計して皆さんにお知らせしました。ちなみに、第一位の作品は200冊越えしていましたし、第二位作品も190冊を超えていました。
ダービー実施期間の全店の販売実績は1300冊を超えて、初回投入冊数が3000冊強でしたので、1か月間での消化率は44%でした。まずまずの実績だと考えています。

9月期のビジネス書の月間ベスト30位の中に7作品が入りました。ダービー出走作品は9作品でしたので思いの外良い成績であったと言えると思います。
そして、全店のビジネス書売上が既存店ベースで対前年比3%増という数字をたたき出してくれました。狙いは当たりました。

表彰
作品別の販売実績
第一位 『レバレッジ・シンキング』
第二位 『頭のいい人の短く深く眠る法』
第三位 『道をひらく』
第四位 『20代のいま、やっておくべきお金のこと』
第五位 『とことんやれば、必ずできる』        以下省略

第一位と第三位はもともと売れていた作品でしたので当然の結果のようでした。
第一位の『レバレッジ・シンキング』が文句なく表彰対象になり、やまぬ羅書店ビジネスダービー初代チャンピオンの座につきました。
また、第二位と第四位は全く注目されていなかった作品が入りましたので、担当営業マンの商品に対する目利きと営業スタイルに敬意を払うべきだと感じましたので、作品を推薦したお二人に特別賞が贈呈されました。

店別の販売実績では
第一位 A店
第二位 K店
第三位 F店
第四位 S店
第五位 T店、ST店
五位は同数で2店舗が入っています。
大型店が一位から三位までを占めましたが、四位のS店はボーリング大会の開催地でしたので、モチベーションが高かったように感じました。

表彰対象となるグループ別一位は
Aグループ A店
Bグループ T店、ST店
Cグループ TY店、KG店
Dグループ H店
それぞれ表彰されましたが、Dグループ一位のH店が全体でも18位と健闘していました。

POPコンテストでは皆さんの苦労がしのばれる作品が多くありました。手書きと印刷と2種類用意された方もいらっしゃいました。審査の結果、らみねーとされた美しいPOPを作成した中経出版のTさんが第一位に選ばれました。

ご褒美
たまたまこの時期にサッカーのJリーグの試合のチケットが入手できましたので、仕入部長にお願いしてビジネスダービーの慰労会で使用させていただくことにしました。

そこで、ビジネスダービーで第一位から第五位までに入賞された5社の営業マンに招待状を送りました。今回は皆さんのスケジュールが空いていたようで、全員が参加していただくことになりました。

1024日のナイトゲームでしたので、1730分に最寄り駅に集合していただき、全員が揃ったところで会場に異動しました。10人が入れる部屋にはモニターTVが置いてあり、ガラス窓の外に観覧席がありました。

とてもゴージャスな場所でのサッカー観戦でしたが、三笠書房のKさんとPHP研究所のKさんは二度目だと喜んでいました。二人とも文庫の仕掛け販売の実績で招待されたことがあるようでした。

中でもPHP研究所のKさんの方は当時ヴェルディに在籍していた森本選手のJリーグ最年少ゴールを見ることができたとはしゃいでいました。

部屋の外の観覧席に異動した参加者が
「隣の部屋に有名人がいる」
と言って騒いでいましたが、飲み物と料理が届いたところで乾杯となりました。

お酒が少し入って、皆さんの気分がひと段落したところでゲームが始まり、グラスを観覧席に持ち込んで観戦する方、部屋の中のモニターTVを見ながらお酒を飲む方、料理を口に運ぶ方と別れました。

観覧席は上から下を見下ろす感じで全体が見渡せる位置でしたので、観客席と部屋を交互に移りながら、リラックスする方も多くいらっしゃいました。得点シーンはモニターTVで再確認ができました。

ゲームは得点の取り合いとなり、43で終了しました。得点シーンも多くありましたので、サッカー観戦の初心者の皆さんにも大変喜んでいただきました。


こうしたお楽しみ企画に参加していただけるのは入賞者だけですが、入賞できなかった方がこうした情報を受け取ると次回こそ自分の番だと頑張る方が多く見受けられます。

反省会
119日に出版社と店のメンバーに集まっていただき、ビジネスダービー反省会を行いました。結果報告と質疑応答が主な内容でした。

結果報告は期間中の作品ごとの販売実績、店ごとの販売実績がメインになっていましたが、10月の販売実績も追加して2ヶ月分のデータも用意しました。
2ヶ月間の実績では上位5作品が200冊越えをしており、合計販売数では初回投入冊数の6割を超える実績になっていました。消化率が6割を超えるとフェアとしては売れた企画の部類に入りますので、上位入賞した出版社の営業マンもほっとしていたようです。

店からの出席者はあまり多くはなかったのですが、参加した店長が貴重な意見を寄せてくれました。

「本物のダービーでは9頭だけというのはあまり聞きません。もっと出走頭数を増やした方が良いのではないでしょうか」

これは次回への課題として真剣に検討する必要がありそうです。フェア実施期間中に訪問してきたビジネス系の出版社の営業マン何人かから、「うちも仲間に入れてくださいよ」という意見が店の担当者や本部スタッフに寄せられていました。

9月はビジネス書としては盛り上がりに欠ける季節でしたので、全店で取り組んでいただける企画がありましたので、出版社の営業として大変助かりました」

「今回は商品選定にテーマの縛りがありませんでしたが、次回はもう少し絞り込んだテーマを設定して賞品を選んだらどうでしょうか」

このような意見もいただきました。

店に対する表彰は店長会ですでに終了していましたが、出版社の方がの表彰はまだ済んでいません。そこで、反省会終了後に表彰式を行いました。販売実績第一位、POPコンテスト第一位、特別賞2名、合計4名の方が表彰されました。
 
その時間だけ社長に出席してもらい、表彰状を読み上げていただき、総務で用意していただいた副賞とともに皆さんに渡していただきました。

「次回は4月、5月のビジネス書の需要が大きい新年度でどうでしょうか」
という意見に皆さんが大筋で合意して反省会は終了しました。

スケジュール
ビジネスダービーが終了すると10月からおすすめ文庫全店フェアが始まりました。どれも企画の作成から実施までに3カ月はかかっています。拡販キャンペーンは1ヶ月置いて2か月間実施します。

「何とせわしないことか」
毎月何かしらの企画が待っています。おすすめ文庫全店フェアの拡販キャンペーンでは、仕掛け売り史上始まって以来の記録的な販売実績が作れました。
その期間中に雑学系の文庫出版社からは雑学系文庫のフェアを行ってほしいという要望があり、急きょ3月に雑学文庫ダービーを企画することになり、56月には雑学系文庫の拡販キャンペーンが入りました。

45月にビジネスダービーを開催したいという要望に応えるためには、スケジュールを調整しないととても自分の身が持たないという気分になってきました。実際に商品を販売する店のメンバーはなおさら大変なのだろうと思います。

ビジネスダービーは4月に入れるしかありません。4月はビジネス書の需要が最も大きい季節です。ビジネスダービーにはお似合いのはずです。
文庫の第一位作品の拡販キャンペーンの売上数字を見ていたメンバーから、ビジネス書も拡販キャンペーンをするべきだとの意見が多く出てきています。
調整の結果、全店フェアの年間スケジュールが固まってきました。

3月    雑学文庫ダービー
4月    春のビジネスダービー
56月  雑学文庫拡販キャンペーン
67月  ビジネスダービー拡販キャンペーン
78月  夏の文庫フェア
9月    秋のビジネスダービー
10月    おすすめ文庫全店フェア
1112  ビジネスダービー拡販キャンペーン
121月  おすすめ文庫拡販キャンペーン


月ごとの実施項目を並べて年間スケジュールを作ってみると、全くの空白は2月しかありませんし、ダブりが3か月もあります。これらの企画はすべて丸山が企画書を書いていました。これからは他のメンバーの協力が欠かせないなと丸山は考え始めています。