2015年8月7日金曜日

物語 うり坊とうり坊な人々 20

拡販キャンペーン
ホームページにおすすめ文庫全店フェアの結果報告と、拡販キャンペーンの予告記事を書いて、いよいよ拡販の準備に入りました。

先ずはPOPパネルの作成です。片面に1か月間の全店フェアの結果をグラフで表現し、もう片面にはおすすめ文庫全店フェアの趣旨を説明した文章を載せたPOPパネルが出来上がりました。

『床下仙人』が第一位を決定づけたのは「景浦さんが用意してくれたPOPパネルのせいだ」とうり坊金沢が盛んに主張していましたので、拡販キャンペーンでは全店で使用するように決め、景浦さんに用意していただくようお願いしました。

11月28日には全店に第一位帯付き『床下仙人』が入荷しました。すぐの陳列した店があって、一部の店ではすぐに売上がカウントされています。特に高級住宅街を後背地に持つ駅の店で最初からすごい数字が出ていました。

店を見に行くと入り口近くの文庫のエンド台の半分を使って『床下仙人』がうずたかく積まれていました。昨年は棚一本『月の扉』づくしの展開でしたが、今回は新刊コーナーをつぶしてそこに商品を展開をしていました。

文庫担当者が変わりましたので、陳列方法も様変わりしています。それでも前年以上の初速が出ていましたので、陳列の工夫の仕方には限りがないのだなと感じました。POPパネルは用意した2種類を使用していましたし、手書きPOPを使っていました。

12月1日から正式に拡販キャンペーンがスタートしましたが、入荷から3日間の先行販売で148冊売れています。表彰の基準には入らない売上ですが、キャンペーンに勢いをつける意味で貴重な売上でした。

初日  130冊
二日目 156冊
三日目 182冊
順調に販売実績が伸びています。12月8日には208冊となりました。

「新記録ペースだ。すぐに追加注文の手配をしよう」
バイヤー同士で相談がまとまり景浦さんに2500冊の注文をしました。

書評記事掲載
一日平均170冊前後のペースで売上は推移していましたが、追加注文が入荷した翌日には再び205冊となり、4日連続200冊越えが続きました。その後は200冊を上回ったり下回ったりを繰り返していきました。

流通が止まる年末年始対策として、もう一度3000冊の追加注文を願いしました。その結果12月の納品冊数は10500冊で、販売実績は5800冊を超えました。1日平均売上は『月の扉』を大幅に上回る新記録ペースでした。

途中、12月16日の朝日新聞の書評欄の「売れてる本」のコーナーに、『床下仙人』が掲載されるという情報が持ち込まれました。おすすめ文庫全店フェアで第一位になったことを掲載して良いかどうか相談があったのです。

もちろんOKの返事を返して当日を待っていました。丸山が自宅で朝日新聞の書評欄を見ると、確かに『床下仙人』が掲載されていました。しかも、おすすめ文庫全店フェアの記事がそこに書き込まれていました。

丸山はそのまま新聞を持って会社に出かけ、必要枚数分のコピーを取り、おすすめ文庫全店フェアの記事部分に赤色でマーキングし、パウチして全店に送る手配をしました。
「必ず『床下仙人』の陳列場所で使うように」
社内ネットの会議室にも指示をアップしました。おすすめ文庫全店フェアの記事が全国紙の朝日新聞で紹介されたのですから、これを使わない手はないわけです。
書評欄の掲載部は日曜日です。その日は公休日だったのですが…

記事を読むと、断裁された『床下仙人』が復活してベストセラーになった仕掛け人の町田の書店員さんが紹介されていました。作品を読んで気に入ってPOPをつけて売り出し、残った在庫を売りつくしてしまった。そして重版を迫ったことは事前に聞いていました。

重版してからは彼女の作成したPOPを使って売上を伸ばした店が多くあり、山村書店の2店舗でもその恩恵を受けていましたし、拡販キャンペーンでも使用しているPOPパネルのコピーは彼女のつくったPOPのコピーをそのまま使用したものでした。

彼女がY書店に入社した時の上司は丸山でした。書籍売り場責任者として実施したPOP勉強会などにも参加した教え子だったのです。『慟哭』で三島とともに業界紙に紹介されたのも彼女です。何かの因縁を感じます。

途中経過
12月のトピックスはうり坊森山の頑張りでした。最初から好調に販売実績を作っていき、12月28日まではチェーン店内トップをキープしていました。チェイン内他店の先駆けとしての役割を果たしていました。

新規店に召集された遠藤がうり坊を離れ、その後任の鈴木が頑張っている筈の一番店が『月の扉』の時と変わらないペースでもたもたしていましたので、よけいに森山の頑張りが目立っていました。

そんな状況で注目されたのは土日祭日に強い店の売り上げの伸びでした。平日の売上では森山が頑張り一位をキープするが、休日が来ると順位が入れ替わる傾向が続きました。女性客に売れていることをそこで強く感じました。
「ベストセラーになる条件は女性客がつくこと」
定石を改めて思いだし、
「これは行けるぞ」
と強く感じました。

休日の頑張りに対し、森山はウィークデイのビジネスマン中心の客層で戦っていました。しかし、最悪のストーリーが待っていました。森山の店は年始3日間休業で4日から平常営業となるのが例年の習わしです。
一方休日に強い店は休まず営業が1店舗、1日だけ休むのが数店舗ありました。

年末年始は流通が止まっていますので基本的に商品の入れ替えがありません。お客さまは今あるものの中から購入していく購買行動になります。そんなスタイルにおすすめ文庫全店フェア第一位はピッタリはまっていました。
「えっ、これ何、おすすめ文庫第一位だって…」
商品とともに掲出されているPOPパネルや、商品にまかれた帯のコピーを見て興味を感じさせるような陳列をしていますし、手に取ってしまえば、
「文庫一冊だったら安いものだし、とりあえず買ってみよう」
となる方が多くいらっしゃいます。

12月29日から1月6日までの9日間、うり坊森山の店の売上82冊に対し、うり坊高木が異動した大型店では192冊、遠藤と比較されて迷惑しているうり坊鈴木の店では159冊売れていました。
この期間に逆転を許した森山の店はその後追いつくことができませんでした。賞金をねらっていた森山は泣きの涙のお正月となってしまいました。


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