2015年10月1日木曜日

半期ごと5本連続10万部越え 2本目

六期生
2013年1月にスタートした六期生は男性が5名、女性が2名が参加した。そのうちの3名は初めて参加する出版社だった。多目の人数でスタートしたのだが、期間中に活動の拠点が都心から沿線の中核都市に移ったせいか、途中離脱したメンバーがいた。

I氏は売り伸ばし塾で10万部計画を成功させたのO氏の後輩だった。彼らはミステリーやSFの文庫が多い出版社に勤務している。文庫出版社の割には販売部数もそれほど大きくはなく、どちらかというと熱烈な固定ファンに支えられている中小の出版社と言われている。

10万部突破を果たしましたが、1本だけでは会社としての営業の革新ができたとは言えない。だから、君も塾に参加してベストセラーを作り出すノウハウを学んでほしい」
O氏からそう言われて参加したI氏は『模倣の殺意』を取り上げて15万部計画を提出した。

売り伸ばし塾でリベンジを果たしたM氏の後輩のSさんは、M氏が取り上げて成功した作品と同じように、発売当初から初速が出ていた『年利15%で増やす資産運用術』を取り上げた。

五期生に参加して11万部突破を報告したT氏の後輩Y氏は、10万部をねらえる作品が見当たらないと判断して、前著『気配りのルール』で2万部超えしている女性の著者の新刊『誰からも好かれる女の人と運を引き寄せる習慣』を取り上げ、細かく刻んだ5万部計画を出してきた。

大商談会で出会った先輩社員の紹介で参加してきたK氏は、2刷で5万部の文庫のミステリー作品『スリープ』を取り上げた。同著者の他社作品では10万部突破が多く出ているのに、自社の作品はそれほど伸びていない。そこに売り伸ばしの余地があるのではないかと考えて取り上げたと言っていた。

一期生に3名が同時参加した出版社から久々に参加したTさんは、同社のベストセラー作家の作品に連なるイヤミスの作品『凍花』を取り上げてきた。計画書には「私のミリオンセラー計画」とりあえず20万部計画と記入されていた。

顔見知りに誘われて参加した大手出版社のN氏は、初版部数1万部でほぼ8割消化した『戦略おべっか』を取り上げた。特定の店で仕掛け売りをすることで認知度を上げ、新規の購買層を獲得し、1ヶ月後に2千部重版をして1年後に10万部にすると言っていた。

I氏が計画を語る
2004年初版1万部でスタートし、刊行直後から「『慟哭』の次はこれだ!」というセールスポイントで営業強化したミステリーの文庫作品がありました。

この作品を気に入ってくれた多くの書店員の後押しで重版を重ね、13刷り4万5千部まで売り伸ばしました。しかし、その後は売上が落ち着いてしまって、ここ1年ほどはほぼ品切れ状態になっていました。

2012年12月、B書店グループから声がかかり、B書店だけで販売するオリジナル商品の銘柄として取り上げられました。
B書店グループだけのために4000部を重版して、12月13日に全量納入しました。すると爆発的な初速実売が出ました。

搬入してから10日間の販売実績を調査したところ、20~40冊台の売上7店舗、50冊以上が2店舗、140冊以上が1店舗と、驚異的な数字をたたき出しており、チェーン全体でも1000冊を超える実績となっています。

すぐに追加注文の依頼が来ましたので、1月に入ってから3000冊を重版して搬入しました。勢いは全く衰えていません。特に新大阪の店では1ヶ月で1000冊以上の実績になりましたし、週間ランキングの第1位を数回にわたって獲得しています。

刊行直後であった湊かなえや有川浩などの全国的なヒット作品を抑えての一位というのは、かなりインパクトがあると思われます。さらに、2月の上旬、中旬と2回に分けて、合計4000冊を追加搬入することになっています。

現在重版中の17刷りが2月22日頃出来上がります。その時点で累計の刷り部数は5万7千部になります。B書店との約束の独占販売期間は2か月ですので、そろそろ期限が切れます。他の書店への営業活動を開始しようと考えています。

作品のタイトルは『模倣の殺意』です。いわゆる叙述トリックを使ったミステリーで、ラストに大どんでん返しの結末が待っています。

帯の“解説は先に読まないでください”というコピーもインパクトがあります。B書店グループの販売実績を参考にすると、特にビジネスマンの多い書店での売り伸ばしが期待できます。

品切れ重版未定で、絶版の危機にあった作品を一つのチェーン店さんの取り組みで復活できたというストーリー性もあります。

重版の部数のうち弊社の在庫分が1900部できますので、ここをスタートとしてパイロット店をつくり、売り伸ばしをしたいと考えています。

売り伸ばしの際に拠点づくりの観点から重点を絞った取り組みをしようとしています。そのため今回の重版では候補書店以外は基本的にご案内をしません。

営業部内での討論の結果、15店舗ほどに絞り込んで案内をすることにしました。その際に重視したことは次の4点です。
1 100冊以上の展開が望める
2 瞬発的に大きな売上が見込める店舗
3 ビジネスマンを見込める客層の店
4 チェーンのバランス

現在、受注済みの店舗は300冊と150冊が1店舗、100冊が3店舗、その他もろもろとなっています。
そして、次回展開分に向けた重版を申請しました。部数は8000部です。その内訳は、
1 先行展開店舗への補充分1000冊
2 新たに30店舗を目安に同規模の展開を希望 4000冊+1000冊
3 B書店の一括管理が終了する時点での単店からの注文への対応2000冊

出荷目標は3月上旬です。この次回重版分で18刷り6万6千部となります。第一陣の初速を見てさらなる重版も視野に入れます。

今後の目標
3月下旬出来の19刷からさらに30~50店舗に拡大したい。
4月下旬出来の20刷ではGWに合わせて注文書を全国一斉FAX送信して、仕掛け販売を一気に広げる予定です。

これらの実績を基に5月の朝日新聞半5段広告に加えたいし、それ以外のサンヤツ、雑誌の小枠の広告も加えてもらおうと考えています。
以上が15万部計画の説明です。

うちなら3万部ね
計画書の説明の後の質疑応答。
「B書店グループはなぜこの作品に着目したのだと考えていますか」
「昔、売れていて、今、品切れ状態の作品から選ばれたんじゃないかと考えています」
「オリジナル商品にするためにはそういう風に選ぶと思うんだけど、なぜ御社のこの作品に目を向けたか興味深いところですね」
「うちの文庫のファンがメンバーの中にいて、特にミステリーには相当詳しい方なんじゃないかと思います。もしかしたら彼が着目したのかも」

「よろしいでしょうか」
Tさんから声がかかった。
「在庫分の1900冊を使ってパイロット店を作ると仰っていましたけど、その後の8000部の重版というのはおかしくありません?」
「私もそう思うよ。B書店の独占販売をテストマーケティングと捉えると、いまさらパイロット店をつくるなんてまどろっこしいんじゃない」
I氏は返す言葉もなくしどろもどろだった。

「うちなら3万部ね」
その時、Tさんのきつい一言があった。

「テストから本格的な拡販に移るタイミングだろうから、ここで一気に強気の部数を重版して、全国的な展開に持っていってもいいんじゃないかと思う」
ダメ押しの発言もあった。

会社に持ち帰って上司と相談しますと言うI氏にさらに他のメンバーが言葉を重ねた。
「計画書は15万部計画になっているけど、B書店グループだけで約2か月で1万Ⅰ千冊搬入しているんなら、一気に30万部計画でもいいんじゃないかと思います。計画も練り直したほうがいいのでは?」
これもまたきつい一言だった。

I氏はみんなの言葉を肝に銘じて会社に帰った。
営業部の会議でTさんのセリフを含めて質疑応答部分を正直に話し、重版部数の再検討をお願いした。そうして決まった部数が2万部だった。

「うちなら3万部ね」
この言葉は会議に参加した全員の胸に刺さった棘になったのだろう。重版は2万部に変更され、I氏は計画書を書き直して、30万部計画として再提出した。


中間報告
梅雨の晴れ間が覗く6月の最終日は六期生の中間報告会の日だ。都心から沿線の中核都市に場所を移して通うのが不便になったためか、7人で始まった会合から2人が離脱して塾生は5人になっている。

Sさんの手掛けた作品は当初、『年利15%で増やす資産運用術』だったが、6刷り3.6万部を刷ってから全く動きが止まってしまった。どうにも営業のしようがなくなってしまったため、計画を作り直し、作品を変更して改めて挑戦することにした。

5月末にテスト販売をした『1週間で美人に魅せる女の磨き方』が一般発売前に重版が決まったことを受け、この作品を取り上げることにした。すぐにパブにも取り上げられて、1ヶ月で5万部を超える重版をしている。今後は30万部を目指したいと報告した。

『誰からも好かれる女の人と運を引き寄せる習慣』はそこそこの初速は出ていて、従犯もできて早々と2万部にまで到達した。だが、その後は他の売れ筋作品が出たために営業部の足並みがそろわなくなってしまった。全社一丸の活動はできず、拡販の時機を失してしまい2万部で終息した。

『凍花』は初版2万部と多目の部数でスタートし、手持ち在庫を増やし営業部主導で書店での仕掛け売りの拠点づくりを行った。仕掛けに応じてくれた書店を中心にほどほどの初速を出してきた。

刷り部数は順調に伸びているのだが、販売実績のブレイクスルーができず、重版のロットの拡大がままならず、現在は6刷り5.4万部。
T屋グループで3000冊の受注があり、今後にまだ期待が持てる状況だ。他の書店チェーンや地域を絞っての展開を目指して、これからも地道に拡販を続けていくつもりだ。

『スリープ』は手持ち在庫の1000部を使って、チェーン本部に拡販を働きかけ、受注はできたのだたが、拠点中心の配本ができず、総花的な配本となってしまった。結果として強烈な売上が作れず、重版の検討材料にもならず、部数の進展とはならなかった。

『戦略おべっか』手持ち在庫を活用して拠点づくりを目指したのだが、その店で強い売上が作れず拠点づくりに失敗してしまった。そのせいもあって他の書店への仕掛け売りの広がりなどできる状況ではなかったようだ。


I氏が語る
出だしはB書店グループのオリジナル商品としての拡販でした。全店で4000部納入して始まった拡販は驚異的な販売実績になって、都合1万1千部を2ヶ月間で納入した。

2か月経って独占販売の約束が終わり、他の書店への営業がスタートする時点で15万部計画をスタートさせましたが、Tさんの「うちなら3万部ね」の一言で8000部の重版が2万部に上方修正されました。

計画書を書き換え、30万部計画で再スタートを切りました。1900部の手持ち在庫では、100冊以上の展開ができる店を中心に営業をスタートさせましたが、出だしから好調で追加注文が殺到しました。

重版のロットを大きく修正した2万部重版では、B書店グループの実績を基に、チェーン店本部への営業を強化させ、取りまとめの依頼をしました。好調な受注活動に支えられて、次回の重版は5万部に決まりました。

4月に入ってプレスリリースが成功してパブに取り上げられる回数が増えていきました。4月2日、読売新聞の文化面で取り上げられることが決まり、4月最初の重版は5万部になりました。
4月14日の朝日新聞『売れてる本』にも連続して紹介され、ゴールデンウィーク対策も含め、今度は10万部重版が決定しました。

その結果、4月は1か月で15万部の重版となり、累計では29万部を超えました。5月中旬出来でも3万部重版を決めていましたので、公称30万部突破とすることにしました。

仕掛け売りの店舗はどんどん増えていて、A4パネル展開店舗は1000店を超えましたし、チェーン店への案内はほぼすべて完了しました。大手のチェーン店には重版決定や書評掲載の度に案内をしています。

Y書店チェーンでは、3月からの全店仕掛け開始からほぼ週売700~900冊をキープしていましたが、朝日新聞『売れてる本』掲載後は、週売1000~1200冊とほぼ1.5倍になっています。

その後もパブに取り上げられていて、5月31日の『ベストセラー解読』に紹介されました。

重版のロットの拡大ができてから新聞や雑誌への広告も増えています。4月末から5月の広告掲載は左記の通りです。特に5月6日からの全国紙半5段広告3連発は、当社では過去に類を見ない新聞広告だと思います。
4月30日発売の週刊現代、週刊ポスト、5月6日朝日新聞朝刊半5段広告、5月15日毎日新聞半5段、5月18日読売新聞夕刊半5段広告掲載と続きました。

5月の初めごろから取次から話があって、調整をしていたのですが、売上も若干落ち着いてきましたし、ほぼ全国的な仕掛け売りの展開が行き渡っていると判断して、5月20日からSCM銘柄がスタートしました。

6月に入ると安定期に入って、受注は落ち着いてきましたが、売上はある程度キープできているので、今後も根気よく売り伸ばしていきたいと思っています。

きっかけはB書店のオリジナル商品開発の成功でした。埋もれていた作品に再度光を当てて売り伸ばす、リバイバルマーケティングの成功事例と言えると思います。

この作品以来、昔売れていて、今は埋もれてしまっている作品を掘り返す好機になったような気がします。すでに何人かの営業マンが既刊本の仕掛け的な売り方を書店員に提案していますし、これから営業活動の柱の1本にしようと考えています。

修正計画を提出して、38万部にまで伸ばすことができた要因は、Tさんのきつい一言がすべてだと思っています。重版のロットを拡大した社内調整は、Tさんの発言がなければ成し得なかったことです。

そういう意味で影響力が非常に大きかったと想いますし、2万部重版に合わせて一挙に全国展開まで持っていくことができました。その後の重版のロットの拡大のひきがねにもなっています。
また、O氏の『大きな森の小さな密室』の10万部突破は非常に良い影響をもたらしたと思っています。10万部突破が対外的には書店や取次に対する信頼度を上げ、社内的には大きな部数で勝負ができる環境を与えたと考えています。
以上が私の報告です。


10万部計画を成功した出版社は、続けてもう一本10万部突破ができることが多い。営業のスタイルの革新が引き寄せの法則となっているのかもしれない。


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