2015年9月27日日曜日

半期ごと5本連続10万部越え 1本目

売り伸ばし塾一期生
春がきたとはいえ未だ名ばかり、まだまだ寒さが残る2012年3月初め、神保町のホールでセミナーの講師をした。タイトルは「営業担当者のための書店発ベストセラーの作り方」だった。

出版社の若手営業マンを集めて行ってきた斉藤塾の一期生から三期生まで活動事例を総括し、テキストの中からベストセラーづくりに直結する「売り伸ばしの技術」と「囲い込みの技術」の講義を行った。

塾は半期をスパンとして活動していて、1年半の間に三期続けてベストセラーが途切れず続いて生まれていた。その中にはミリオンセラーが3点もあったし、20万部突破作品もあった。終了後には活動について参加者から多くの質問が寄せられた。

「塾生になるにはどうしたらいいのか」
「私も10万部計画をやってみたい」
中にはこんな風に語る参加者もいたので、何かしらセミナー参加者への受け皿を用意すべきではないかと思えてきた。

彼らにはテキストの内容を講義しているので、売り伸ばしの実践だけを行う塾を始めることを決めた。5月になって、名刺交換をした方々にメールでご案内をしたところ、2名から参加希望の返信があった。

グループワークの良さは2名では発揮しにくいので、他にメンバーを集める方法はないかと考えた。そこで浮かんだのがリベンジという言葉だった。
これまで塾に参加して、見事に玉砕したメンバーが何人かいる。一度であきらめてしまっては何も残らない。彼らにリベンジのチャンスを与えるべきだと考えた。

計画に失敗した塾生に案内を出したところ、リベンジに燃えて参加したいと申し出たメンバーがいた。10万部計画を成功させた塾生の中で、出版社が変わって新たな場所でチャレンジがしたいと参加の意向を示してくれたメンバーもいた。

前年8月に開催された二期生N氏の勉強会で一緒になった書店員がいた。彼は四期生の活動に参加していて、店頭で売り伸ばしを実践する役目を担っていた。
続けて塾に参加したいと申し出てくれたので、新たに発足する売り伸ばし塾に参加してもらうことにした。

計画に取り上げられたタイトル
2012年6月に塾はスタートした。一回目の会合は過去の塾生の活動を紹介しながら、二回目以降の会合のやり方と、10万部計画のストーリーの再確認を行った。そして、次回会合の1週前までに計画書を提出するように伝えられた。

翌月に行われた会合では、提出されたそれぞれの計画書の説明と、計画に対する質疑応答が行われた。提出された宿題は4名とも10万部計画だった。

氏は3月のセミナーに参加していた。講義では売り伸ばしが論理的に行われ、容易にベストセラーが作られているように感じられた。質疑応答の後も会場に残って名刺交換をしたら売り伸ばし塾の案内が来た。

現状の営業スタイルにはマンネリ化があるように感じていたし、何とか営業部そのものを革新できないものかとも考えていた。今までの営業体制から脱却して、自分の手でベストセラーを作れる営業マンに変身したいと思っていた。

売り伸ばし塾に参加することにしたO氏が取り上げたのは、『大きな森の小さな密室』という文庫のミステリー作品だった。

同じくセミナー参加者のY氏は中堅の営業担当で、自社の売れ筋作家の作品の中からビジネス書の『NO1営業力』で計画書を提出した。

三期生の活動に参加して、初版を売りさばくのに汲々として計画を大失敗をしてしまったM氏は、売れ筋の作品を常に提供し続けている著名な翻訳家の作品、『一流の人に学ぶ自分の磨き方』を取り上げた。

三期生で10万部突破を果たしたH氏は、移った先の出版社の作品でも自身の手でベストセラーを作りたいと考えた。そこで、新刊の自己啓発書『TREASURE MAP』で10万部計画を発動して参戦した。

ビジネス書が3点とミステリーの文庫作品という組み合わせで、10万部を超えるベストセラーを作りたいと希望を持って塾はスタートした。

塾の活動は、月1回の会合のたびに進捗状況を報告し合い、質疑応答を繰り返しながら進めていった。

O氏の計画書
O氏が取り上げた『大きな森の小さな密室』は有楽町の書店員さんがこの作品を気に入って、仕掛け販売を実施して成功させていた。その書店員さんが使った拡材を使用して他店に広げてみたら、そこでも好調に売上が推移した。

そこで、この作品をもっと売り伸ばしたいと考え、10万部計画を作成した。
計画書の目的欄には、売り伸ばしのノウハウを培い、コンスタントに5万部、10万部の作品を生みだす販売力を身につけると記入されていた。

計画はⅠから6のステップで組み立てられていた。
1 仕掛け販売の成功事例を元に注文書を作り、仕掛け売り店舗の広がりを作る。
2 拡材、展開写真、購買層、上位店の販売実績、などを明記して、さらにダジャレも入れて親しみやすい注文書を作り書店に流す。
3 上半期自社売上ランキング第1位の帯を作成、さらにランキング第1位を広告にも使用する。
4 有楽町の店のデータと拡材を使って、チェーン本部に営業を展開し、仕掛け店の増加を目指す。
5 広告情報を注文書に掲載して受注を促進させる。
6 定期枠の広告に既刊のこの作品を何とか割り込ませる。

有楽町の店をテストケースと考え、その成功例を注文書で紹介しながら他の書店に広げる。チェーン本部への営業で仕掛け店を増加させ、新聞広告を掲出して全国的な展開を目指す。こうした作戦で10万部越えは可能だとO氏は語っていた。

仕掛け売りの拠点づくりについては、悲喜こもごもの結果が出て明暗を分けていた。発売になったばかりの新刊がY氏とH氏によって、2点取り上げられていた。

仕掛け売りの拠点づくりのためには重点的な配本が重要なのだが、なかなかうまくいかずに苦労をしている様子がうかがえた。
また、まとまった数の受注をいただいても、その店で初速が出ないと、次の手が打ちにくくなってしまう。悩ましい限りだったようだ。

売れていることがわかる注文書づくりは切実な問題らしく、毎回の会合のたびに各人のつくった注文書を見せ合って、意見交換をして工夫を重ねていった。
そんな中で、ダジャレ付きの注文書には何時も全員の注目が集まっていた。

中間報告会
半年後に行われた中間報告会では、計画書を提出した4件のうち、2件が10万部を突破している。計画の成功率は50%だった。

Y氏は自社の売れ筋の作家の作品を取り上げたのだが、初動段階で影響力の強い、初速の良い店を作ることができなかった。仕掛け売りの拠点づくりがうまく機能しないと10万部計画のストーリーは次に進めない。
結果として重版もできずに終息し、残念ながら10万部計画は失敗してしまった。

H氏は、出版社が変わると周囲の目が今までとは違ってきて、営業活動がうまくできず、仕掛け売りの拠点づくりが思い通りにできない現実を味わった。
ボリューム陳列ができた店でも初速が思いのほか取れなくて、拠点が作れず10万部計画は失敗してしまった。

リベンジ組のM氏の取り上げた作品は、売れるか売れないかわからない新刊を取り上げて失敗してしまった前回の反省を生かして、すでに売れている作品を取り上げていた。
発売前のテスト販売の段階から初速が出ていて、これなら売り伸ばせると満を持して10万部計画を提出していた。

途中、8万部を過ぎたあたりで売上が停滞する時期もあったが、関西地区を根拠地としてベストセラーづくりを成功させている10万部メーカーのエリアマーケティングを参考に、マーケティングの練り直しを実施した。

打開策の一番目は阪急電車の車内広告を実施することだった。交通広告と連動した営業活動で関西地区でのエリアマーケティングを強化して、関西を起爆剤に再度仕掛け売りを強化していく方針が採用された。

また滞りがちだった新聞広告は、新刊の定期広告枠の中への割り込むことで再開させることが決まった。
さらに大阪の御堂筋線への電車広告実施、関東では京王線の電車広告への割り込みを実施することも決まった。

こうした積極的な姿勢が売上を回復させ、書店での仕掛け売りの再開も可能にしてくれた。その結果、新たに2万部の重版が決まり、11月の上旬に10万部を突破することができた。

O氏の報告
O氏が所属するのはミステリーやSFが中心の文庫を刊行して、コアなファンが多くいる、知る人ぞ知るというスタンスの出版社です。

今回は有楽町の書店員さんが単行本の時にこの作品を読んで気に入ってくれました。文庫化されるのを、満を持して待っていたかのように、文庫版発売と同時に、独自のPOPを作成して、自店で売り伸ばしをしてくれていました。

2011年10月に発売された『大きな森の小さな密室』は初版1万部でスタートした作品です。書店員の独自のPOPを拡材として使用する許可をいただいて、仕掛け売りの広がりをつくる営業に利用させていただきました。

毎回工夫をして変えているダジャレ付きの注文書が思いの外好評で、その気になって、仕掛け売りをしてくれる書店員がだんだんと増えていきました。

仕掛け売りの店を広げることが売り伸ばしの決め手になると思うので、売ってみたいと思わせる注文書が有効だと考え実行したものでした。また、書店員が気に入って、毎回誰かが注文をくれるからこそ、ダジャレ付き注文書は継続できていました。

読者に対し、よりアピール度の高い帯をつくるため、“続々重版”、“上半期売上第1位”などの新帯を重版の度に作っていきました。

取次の文庫ランキングに登場するようになってからは、チェーン店本部や取次への営業案内を強めていき、チェーン本部からまとまった注文をいただくことができました。

発売後の重版は2千部ペースで推移していたのですが、ダジャレ付き注文書で受注の促進がうまく回り始めた2012年4月からは、重版のロットの拡大が上手くできるようになりました。
4月は8千部、5月1万7千部、6月7千部、7月2万部、9月8千部というように重版を重ねることができ、11月の報告会の時点では累計9万2千部になったと報告ができました。


12月は年間売上第1位帯で訴求し、どの店にも文庫の棚前に積んでもらえるような営業をします。1月には阪急の電車広告が決まり、起爆剤として関西圏で仕掛け売りの再度の構築をする予定になっていますので、10万部突破は充分可能であると考えています。

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