2015年9月10日木曜日

店の顔を作り直す

入口の活性化対策
入口は店の顔の部分に当たります。
だから、そこに置く商品は本来厳選したものであるべきです。入口に置いてある商品を見れば、その店のエッセンスを感じ取れるようにするのが望ましい姿だと思います。

お客さまへの店への印象付けは、ほぼ入口で決まるものだと思って間違いないでしょう。だから、これから入っていく店内にはどのような商品が置かれているのか、楽しみに思っていただけるようなイメージが必要なのです。

店の一等地であるわけですから、良く売れるスペースのはずです。確かに、バーゲン商品を並べると売上は作れるのでしょうが、店としての印象を安っぽく感じさせてしまいかねません。

「入口の活性化をしたいのですが、アイデアはありませんか」
店長から相談を受けて、店の若手社員の協力を得て、入口の印象を一変させるような店の顔を作り直す仕事をしたことがありました。

もちろんうり坊の基本は出版社の力を借りることですから、出版社の方々を巻き込んだ活動にしました。折よく、出版社のエリア担当者にもバリバリの若手が何人かいましたので、彼ら巻き込んでいくことにしました。

店内の商品の並べ方を変えるておすすめ本コーナーが活性化でききましたし、文庫新書やビジネスの仕掛け売りで大きな売上を作ることにも成功していました。店の入り口でも同じような形をつくることができるのではないかと考えました。

入口に置く商品はジャンルを特定せず、複数のジャンルから選びました。店内にどのような商品が置いてあるの推測でき、ショーウインドウ効果をもたらすようなイメージを狙いました。

バーゲンブックを展開していた大型ワゴンを外し、小ぶりなテーブルを何台か置いて1台に1作品を基本に、複数のテーブルに店としてのおすすめする作品を並べる。何をおすすめしたいのか明快に伝わるイメージを作ろうとしました。

ただ、一日で一気に何台ものテーブルを使っての展開はすぐにはできませんでした。出版社の営業マンと若手社員たちの協力で、順次作品を埋めていきました。

一番手は1年目営業女子
最初に展開をした作品は『パソコンの裏ワザ基本ワザ大全』でした。
この作品は「できる大人の大全シリーズ」の新刊で、1年目営業女子が私を名指しで訪ねてきて、一等地を使った仕掛け売りをしてほしいと依頼をしてきたものです。

「若手社員の売りたい気持ちを刺激しながら販売ステージの性格付けを明快にする」と言っておきながら、若い女性に名指しで営業されると、つい大きな部数を申し込んでしまいましたので、一番目の作品は1年目女子と自分のおすすめでスタートしました。

このシリーズは既刊のベストセラーの数冊分のネタを集めて決定版として再登場させる、いわばリサイクル本です。シリーズ共通で厚さ34センチの本にしています。それでいながら、わずか1050円のオトクな値段設定なのです。

2012年刊行の第1弾『できる大人のモノの言い方大全』2013年上半期総合ベストセラーの第5位に入りました。その後発売された作品を含め、シリーズ累計では100万部を超えていました。
最盛期には大きな部数で一等地での展開をして、100冊単位の注文を繰り返した記憶が残っています。

今回の作品はパソコンがらみの内容でしたが、IT系の専門家向けではなく、一般のビジネスマン向けに、ビジネスノウハウとして販売したら売れるだろうというイメージが湧いてきました。そんなことから、最初から強気な部数で注文をした訳なのです。

5月28日に注文通りの100冊が入荷しました。早速、入口にテーブルを設置し、1点で1台を占拠するスタイルでのボリューム陳列を作りました。

3列、横4列の12面積みでしたが、1冊で4センチ近くの厚みがありましたので、抜群のボリューム感を持たせることができました。店の入り口にパソコンの基本ワザの本がうずたかく積まれているのを見ると誰もが不思議に思うはずです。

大きなパネルと手書きPOPをつけて目立つような陳列をしてお客さまにアピールしました。商品展開を始めてから5日間の売上でその週の週間ベストの1位にランクインしました。その後もよく売れて、週間ベストの常連になり、好調に売上は推移していきました。一番手は大成功です。

二番手は2年目営業女子
次に展開したのは入社2年目女子おすすめの『脳には妙なクセがある』です。
店の新書担当と話し込んで、6月開催の新書ダービーに重複推薦でノミネートし、選定会議で選ばれて出走した作品です。

彼女が店に営業に来た時に、ビジネス書の販売ステージでは『覚悟の磨き方』が、タワー陳列を含めて大きな展開をしていました。

「どうしたらこんなふうに陳列してもらえるのでしょうか」
そんな素朴な質問をしてきましたので、この店での仕掛け売りの基本的な考え方、どの程度の売上を目標としているのかを説明しました。

その時の彼女のおすすめ作品は『天才とは努力を続けられる人のことであり、それには方法論がある。』という長いタイトルの作品でした。
それなりに売れていましたし、何回か注文を繰り返していましたので、いい場所にちょっと強めに商品を展開したら、トントンと売れていきました。

「これくらい売れるんなら、タワー組んであげるよ」
実際にビジネス書の販売ステージを使って、大きな展開で仕掛け売りをしてあげました。

それ以来、定期的に営業にやってきて、若手社員たちとも仲良くなっていきました。新書大賞にノミネートしたいと言い出した時も、店の入社2年目の男子がそれに反応して、二人で作品を押す重複推薦になった経緯がありました。

彼らに「仕組みを使って売り伸ばす方法」を話すと二人ともその気になっていきました。二人は200冊展開で一気に売上を作り全店一位に押し上げたいと言い、「店の入り口を使わせてください」と言ってきたのです。

注文した200冊は69日に入荷しました。新書ダービー開始から1週間以上経過していました。

入口では小さめのテーブルを2台つなげて変則的な陳列をし、新書ダービーに隣接したステージでも大きな展開をして、2か所でのおすすめ本の展開が始まりました。
その週から週売40以上の実績が作れて、それが4週続きました。1か月間の新書ダービーではこの店の売上が牽引して全店で第一位を獲得しました。
 
入口と店内での2か所でのボリューム陳列、ダービーコーナーでの展開、それぞれの場所でのPOPの使い方等々。自分のおすすめ本でのこうした展開は初めてのようでしたが、努力した甲斐があってとびっきりの成果を得ることができたようです。

三番手も入社2年目女子
第三弾のおすすめ作品は『なんでも英語で言ってみる』でした。
元々は語学書売場でテープを流しながら販売していた作品で、それなりに売れているのになかなか商品確保ができなくて、語学書担当はいつもボリューム感が作れないことを嘆いていました。

「商品をもっと手配できれば、もっと売れるのに」
入社2年目女子の営業担当者も同じように考えていましたが、社内での部数確保ができなくてちょっとへこんでいました。

重版のロットを大きくしない傾向がある出版社ですので、特に売れている作品は営業マン達の奪い合いになることがあります。そうなると若手は部数確保は難しく、仕掛け売りをして強い実績が作れても長続きできないことがありました。

『こころのふしぎなぜどうして』という作品で塾生が10万部計画を実施して、50万部以上の実績を作った際に、初期の拠点づくりからベストセラーづくりに至る過程で積極的に協力した縁がありました。

塾生だったメンバーやその上司に自分の名前を言えば、必ず商品は確保できるという確信がありましたので、二人にそのことを伝えました。
同時に、店頭の一等地でボリューム陳列すること、テープを必ず流すというふたつの条件を申し入れて交渉してもらいました。

注文した商品は6月11日に減数なしの150冊が入荷しました。ちょうどその日は語学書の担当者が休みだったので、すぐやる課の自分が朝のうちに場所を作り商品を並べ、パネルやPOPをつけて陳列しました。

用意できたのは比較的大きなテーブルでした。その1台を使ってボリューム陳列をしましたが、縦3列横6列並びましたので、18面積みの大きな展開になりました。本の厚さもけっこうありましたので、ボリューム感満点になりました。

パネルや手書きPOPをつけて訴求力を高め、レコーダーを置いてテープを流し始めたら、週売20超えが作れました。売上は好調に推移して、150冊の仕入では足りなくなってしまいました。

四、五番手はベテラン男性
ちょうどその頃、ビジネス系の出版社から仕掛け売りの相談があり、
「交通広告をするので、店頭のいい位置で大きな展開をしたい」
という申し出がありました。しかも2社から同じ時期に受けました。

交通広告もそれなりに費用が掛かりますので、売上を上げないとペイできない仕組みになっていますので、彼らも真剣です。広告と店頭での商品展開がリンクすると、売上が跳ね上がることがよくあります。

交通広告は一過性のものですが、店頭での仕掛け売りの展開はそれなりに長く継続させることができます。店頭での仕掛け売りの応援を交通広告がしてくれるような関係性が売上を作ってくれるのです。

2社ともかつてビジネスダービーに参加していましたし、むげに断ることもできませんので、両作品とも200冊規模での仕掛け売りをすることになりました。

彼らのおすすめ作品は下記の2点です。
『頭のいい人はなぜ、方眼ノートを使うのか』
『脳の強化書』

店の入り口にテーブルを並べるゾーンの壁側に、従来からある販売ステージがあります。この場所でかつては書店発ベストセラーのきっかけになる売上を作ったことがありました。そのスペースを使って、この2作品を陳列することになりました。

図らずも入社2年目以内の若手女子のおすすめ本と、同じゾーンで対決するような形で商品の展開がスタートしましたので、
「若手女子対ベテラン営業マンの対決を仕組む」
というタイトルをつけて入口の活性化対策の柱にするようになりました。

両作品はともに200冊規模で入荷し、壁面側のステージを使用して、左右に分けて面陳と平台の両方で商品を展開しました。どちらも期間中に大型広告を予定していますので、交通広告に使用するポスターをパネルとして使い、POPも付けて賑やかしにしました。
 
壁面は入口に入ってから目に入る条件でしたし、2作品を分割して陳列していましたので、パネルとPOPの使い方が難しく、ちょっと散漫になったきらいがありました。

六、七番手は若手女子
若手女子対ベテラン営業マンの対決を仕組む最終兵器は若手女子と新書担当がタッグを組んだのおすすめ作品でした。出版社の新書担当の若手女子が10万部計画に取り上げた作品も、その月の新刊も売上が大いに見込めると言ってていました。

店頭の活性化対策としてこの2作品を取り上げる
テーブル11冊品で大きく展開する
塾生の10万部計画を支援する

店の新書担当はこうした大義名分を持ち出して話し込み、商品を出荷してくれるように働きかけました。
「そこまで言われたら出さざるを得ません」
そう言いながら出版社の若手女子が出荷の手配を済ませてくれました。

彼らのおすすめ作品は2点です。
6月18日に『だから日本はズレている』が150冊、『自分の壁』が200冊入荷してきました。

朝便での入荷でしたが、今回は店の新書担当が早番で出社していましたので、二人で協力して陳列を完成させました。

こうして予定していた7作品が揃いましたので、一つひとつの商品のボリューム感を調整しながら、テーブル配置を一部変更して、それぞれの作品の主張がお客さまに伝わるように意識して陳列し直しました。

既刊の『だから日本はズレている』は縦3列横3列の9面、新刊の『自分の壁』は縦3列横4列の12面にして陳列しました。              

どちらも売れ筋商品でしたので期待値はとても高いものがあります。一つのテーブルに二つの商品を並べるのはある意味邪道ですので、売上が取れるのか心配しましたが、両作品とも売れ筋作品でしたのでそれなりに実績を上げることができました。

これで7作品が揃い、入り口活性化対策の商品展開が完了しました。これまでは雑然として何を強調しているのかわからないスペースでした。ボリューム陳列7連発によって、店の担当者のおすすめ本ゾーンとして認知されるようになりました。

途中経過
ボリューム陳列+パネル+手書きPOP。
これが長年の経験で培ってきた店の一等地で大きな売上を稼ぐ必須アイテムです。パネルも手書きPOPも、営業マンと店の担当者の協力でつつがなく準備ができて、売れる状況を作ることができています。

ボリューム陳列7連発を作ったことで店の入り口のイメージがそれまでと一変しました。店の担当者のおすすめ作品の大展開となりましたので、その場所の性格付けが明快になりました。
その場所で手に取らなくても、入口でちら見したことが、店内の商品への波及効果を持つことを期待します。

『パソコンの裏ワザ・基本ワザ大全』は初速が良く出ていました。しかし、追加注文の入り具合が悪くて、在庫が40冊台にまで減ってしまいました。在庫が減るとやはり売上はダウンしてしまいます。ちょっと嫌な状況になってきました。

『脳には妙なクセがある』は6月9日に商品展開をスタートして、6月15日までの1週間に、目標としていた週売40冊を超えることができました。その後も順調に売上が推移して、週売50冊超えもでています。

特定の店で週売40以上を4~5週間キープし、そのデータを使った営業で他店への仕掛け売りの広がりができると、ベストセラー街道まっしぐらとすることができます。
若手女子はこの作品で10万部計画を実行すると言っています。この店の販売実績を基にできると、他の書店への営業が楽にできるようになります。成功してほしいものです。

『何でも英語で言ってみる』は6月11日からの商品展開です。安定して週売20を超えて推移して、若手営業女子は何時も元気でニコニコしながら店にやってきます。
新刊の『自分の壁』『だから日本はズレている』も好調な立ち上がりを見せていますが、新刊の方がさすがに動きが良いようです。
出版社の若手女子に対抗して頑張ってもらおうとした、ベテラン男性営業マンのおすすめ作品はあまり良い動きは見せていません。ちょっと心配な状況です。

店の若手社員のおすすめ作品を店の入り口を使って仕掛け売りの経験を積むように仕向けたはずなのですが、入社2年目男子の担当ジャンルの商品が多く並んでしまいました。
彼の頑張りがその後の店の入り口の活性化をもたらし、その後の若手女子の活躍につなげたいと思います。

結果の検証
入社2年目若手女子とベテラン男性営業マンのおすすめ商品7連発の検証は、6月の月間売上で実施しました。
展開作品は軒並み月間ベストの上位を占めて、予想以上の効果がでています。特に『脳には妙なクセがある』は店内の総合ランキングの第一位に輝いています。

 6月月間総合 1位『脳には妙なクセがある』        新書1位
        3位『自分の壁』              新書2位
        4位『パソコンの裏ワザ~』         理工1位
        7位『何でも英語で言ってみる』       語学1位
       13位『だから日本はズレている』       新書3位
       17位『頭のいい人はなぜ、方眼ノート~』   ビジネス9位
       22位『脳の強化書』             ビジネス11位

月間総合売上の上位を占めた若手女子のおすすめ作品と、中位にいるベテラン男子営業マンのおすすめ作品の対決は、今のところ若手女子に軍配が上がっています。

店の入り口活性化のために行ったボリューム陳列7連発は、複数個所陳列の作品が多勝ったこともあって、7アイテムトータルで500冊以上の実績となりました。それまでの雑多な商品の売上と比べると抜群の実績と言えます。

9月末の時点の調査で『脳には妙なクセがある』はこの店での累計売上が600冊を超えました。新書担当はこの作品で1000冊越えを狙うと言っていますし、若手営業女子も10万部を目指すと言っています。

こういうチャレンジ精神が未来を創ってくれるのでしょうし、他のメンバーも成功体験を築くことができたはずですので、今後の活動に大いに期待したいと思います。

店頭の一等地におすすめしたい商品をボリューム陳列するのは、ある意味、書店員の心意気の現われと受け止めることができます。書店員一人ひとりの心意気が強く感じられるからこそ、お客さまを呼び込む力になるし、強い売上を作ることができます。

入社1~2年目営業女子も自店の若手担当者たちも、売上をつくるための商品確保や陳列の技術を駆使して、「店頭で劇的に売上を上げる技術」を会得したはずですので、今後は一皮むけて、もっとステップアップした仕事をしてくれることを期待します。


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