2015年12月8日火曜日

客導線線上にボリューム陳列 2

反応は良好
10月25日、特設ステージは店の都合で入口近くのレジ前に移設された。レジに立ち寄る人、レジから帰る人の導線に良好な位置関係を確保できて、ここはここなりに良い場所のようだ。

今回進めている拡販のコンセプトでメインターゲットの客導線上の位置は外せない。そこで、特設コーナーの隣の新刊コーナーに1面当たり25冊の高さで、2面並べて50冊のボリュームで積み直した。

これで女性誌を目指して入店してくる女性客の導線上の位置を確保できる。
ドタバタした特設ステージのつくり方ではあったが、結果としてレジ前も含めて店の入口近くに2か所のスペースを確保して、当初想定していた以上の商品展開ができあがった。

お客様の反応は良好で、拡販開始の10月23日から29日までの7日間で売上は35冊となった。1日平均5冊だ。

10月29日には150冊の追加注文が入荷。すぐに品出しをして250冊レベルでのボリューム陳列が完了した。レジ前の特設ステージでは1面当たり20冊以上積み上げられ、誰の目にも自然と入ってくるボリューム感が作れた。

入口から女性誌に向かう導線上の場所では、対象客層が類似している『子どもが変わる怒らない子育て』もよく売れていた。ターゲットが同様な作品が並ぶと相乗効果を発揮しているようだ。

10月29日~11月5日の7日間では週売40冊を超えていった。2週で80冊以上となり、予定の数字をクリアできた。

その後も順調に「推移して、4週間で160冊超えの販売実績をつくることができた。これは他店へ影響力の持てる強い売上だ。
ここまで来て二人は拠点づくりの第一段階は成功したと判断した。

Tさんと同じように個人授業を受けたSさんも、独自に10万部計画を進めていた『子どもが変わる怒らない子育て』もよく売れていた。

「その作品を売るならジャストフィットするのは二子玉川だろうと言われました。駅の近くの書店に積極的な営業を仕掛けると、おかげさまで書店担当者の協力をいただくことができた。すると、田園都市沿線の教育熱心な母親たちに受け入れられて、驚異的な数字をたたき出すことができました」
たまたま店で一緒になった時彼はそんな風に言っていた。

「その店でも『こころのふしぎなぜ?どうして?』を展開してもらえないかな」
とTさんが独り言を言った。その店は彼女の担当ではなかった。

その後、田園都市線の担当から「二子玉川の店から50冊の注文をもらった」とメールが届いた。教育に関心の高い私鉄沿線の主要駅ではこの二つの作品は共通して売れていく。この時から二つの作品のコラボ営業が始まり、受注がますます促進されるようになった。

「『子どもが変わる怒らない子育て』が売れているなら『こころのふしぎなぜ?どうして?』も売れますよ」

仕掛け売りの広がりをつくる
店頭の一等地で大きなボリュームで商品を展開するには、ワゴン一台、あるいはテーブル一台程度のスペースを用意しなくてはならない。そして、作品のメインターゲットの客導線上に展開場所を設定できると大きな売上を期待することができる。

「あれ、なんでこの商品がこんなにたくさん置いてあるんだろう?」
とお客さまに不思議に思っていただければ第一段階は成功だ。

お客さまの注意を喚起するには感動させることも大切な要素だ。そのキーワードの一つは意外性だ。人は思ってもみないことに出合うと、心が揺れたり、感動したりするはず。商品そのもので感動させることができるとお客さまは納得する。

また、どこでも見たことがないようなステージを作って、陳列で感動させるやり方も一つの方法だと思うし、POPの魅力的なコピーやコメントで感動させることができると、それはまさに販売員冥利に尽きることだと思う。

知りたがっている知識や情報を提供して納得していただけると、お客さまはスムーズに購買行動に移行してくれる。
「ああ、そうか、そういうことなんだ。だったら買ってみよう」
そう思わせることができれば、店頭の一等地で行うボリューム陳列は大成功となる。

仕掛け売りの広がりをつくるには他の営業マンとの連携が必要になる。自分一人ではとてもすべての店を回ることはできないものだし、販売実績のスケールを大きくしたいなら、まわりの人間にいかに協力してもらうかが重要な要素となってくる。

10万部計画の次のステップは仕掛け売りの広がりをつくる作業だ。Tさんにとってありがたいことに、「この店で成功した拠点づくりのデータを使って営業すればいい」と塾長が言ってくれたし、何でも協力してあげるとも言われた。

店頭の一等地で仕掛け売りする方法とそ意味、他店への影響力のある販売実績をつくる拠点づくりの方法などがわかるペーパーをつくり、仕掛売り開始から4週分のデータを整理した表を一緒に添付して、メールで送ってくれた。

「データは売れていることがわかる注文書の材料として使用し、ペーパーは営業部の他のメンバー向けの教材となるような使い方をしてほしい」と添え書きがしてあった。

2回目の講義のテキスト「囲い込みの技術」にその辺の事情が書き込まれていた。
Tさんは週売40を超える販売実績と、仕掛け売りの商品展開の写真をセットして、売れていることがわかる注文書を作成した。

売れていることがわかる注文書は誰が営業しても受注を促進してくれる。

仕掛け売りの全国的な展開が始まった
「あの店でこういう売り方をしているのなら、うちの店でも売れるかもしれない。あの店に負けてはいられない」
という声が書店員の間から聞こえてくるような注文書が、最もいい注文書なのだろうと塾長は言っていた。

そして、完成した注文書と拠点づくりの方法が書かれたペーパーをセットして、同僚の営業マンに渡し、それぞれの担当エリアで書店への営業提案をするよう促した。

受注がしやすい注文書はみんなが使ってくれる。それで受注が促進できると、仕掛け売りの広がりをつくる営業が活発に機能していく。これも「囲い込みの技術」に出てくるやり方だった。

それでもTさんはこれだけでは芸がないと考えていて、社内の営業担当者が一丸となって拡販する体制はどうしたらできるか模索していた。そこで『こころのふしぎなぜ?どうして?』の実売を競う社内コンペを企画した。

残念ながら社長の許可が得られなかったので、公的には認められなかった。それでも個人的に参加者を募って、12月には営業担当者62名中34名が参加する非公式のコンペとして始めることができた。

こうしたちょっとしたお楽しみを加えて参加者同士が盛り上がりを作ると、組織的な販売促進のスタイルが軌道に乗ると考えたものだった。

こうした活動により他の営業マンの活躍が目立つようになっていき、他の書店やナショナルチェーンでも強い売上を作りだす店が生まれてきた。方々の書店で強い販売実績ができると、取次のベストテンの上位にランクインする。

ベストテンの仲間入りをすると販売速度を早めていくことができる。そこで重要なのは重版のロットの拡大だ。クリスマス時期は児童書の最盛期になるので、また拡販のチャンスがやってくるはずだ。

残念ながら重版のロットは期待したほど大きくすることができず、12月の一時期、在庫がない状況を作ってしまった。それでも売れ行きが良いから起こった出来事として、周囲では好意的に考える人もいたようだ。

「在庫さえあればもっと売れていたのに」
という声はあちらこちらから漏れてきたし、積極的に拡販をしている営業マンたちは、忸怩たる思いを抱いていたに違いない。

10万部計画は見事に達成
売れ行きがよくなると社内の認知が好転し広告予算も取れるようになって、新聞広告も多く掲載されるようになった。そのことが仕掛け売りの全国的な展開をさらに加速させていき、全国的に売れている状況を作ることができた。

売れていることが認知されるとパブリシティで紹介されることも多くなり、ベストセラーとしての地位がゆるぎないものになっていった。

1月以降話題性の高まりとともに、重版のロットが今までとは比べ物にならない大きさになってきた。書店からの注文のロットも拡大して、50冊から100冊でパネル付きで展開する店がどんどん増えていった。

10万部計画は順調に進んでいき、2014年1月の中間報告会を迎えた。

「おかげさまで、16万8千部を突破しました」
と Tさんは自信を持って報告することができた。
塾長は成功体験を積んだ営業マンがまた一人増えたことを喜んだ。

売れていることが話題になり、作品を読んでくれる方々が増えることによって作品の良さが多くの方に認知され、口コミでも広がっていく。話題性の高まりとともに商品の売れ行きは増幅され、20万部、30万部と着々と版を重ねていった。

「45万部を突破しました。まだまだ売り伸ばして、会社史上初のミリオンセラーをねらっていきたい」

2014年の秋には嬉しそうにTさんは語っていたし、営業から開発部門に異動して、新しい仕事にチャレンジしていますと目を輝かせて言っていた。

Tさんはとても明るい顔つきになっていた。成功体験をすると自信を持つことができるし、それが顔に現れるのだと改めて思う。


作品のメインターゲットの客導線上にボリューム陳列をする拡販スタイルは大成功だった。Tさんが行った販売現場発ベストセラーを作り出す方法の成功であると同時に、10万部計画の拠点づくりの成功例として、経験知がまた一つ蓄積されたのだ。

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