2015年8月3日月曜日

物語 うり坊とうり坊な人々 17

拡大うり坊会議
90作品を10作品に絞り込むことはとても大変な作業です。出版社の方々や店の文庫担当者が気合を入れてノミネートした作品です。みんなの思いが込められています。この絞り込みを誤ると企画自体の失敗につながりかねません。

9月3日に拡大うり坊会議を招集しました。社内ネットに告知し、店文庫担当者には可能な限り集まるようにお知らせしました。その甲斐があって、OB二人を含め15人が参加して会議をスタートさせました。

絞り込みのステップはその時々で様々ですが、この時は最初に単価の安すぎる作品を外していきました。単価で足切りをするのには理由があります。業績は販売金額でカウントされます。対前年実績を上回ることが重要なのです。

前年の実績には『月の扉』の実績があり、『ダ・ヴィンチ・コード』の上・中・下3巻の年間10万冊の実績もありました。単価が低いと冊数は伸びても販売金額が稼げない状態になることを恐れています。内容に自信を持って推薦していただいた方には、申し訳ない気持ちでいっぱいです。

単価の低い作品は薄いものが多く、ボリューム感を出すのに在庫量が必要になります。このあたりも微妙に売りやすさに影響が出てしまうことがよくあるのです。
単価が高すぎてもお客さまの購入機会が少なくなることがあります。ただ、販売金額は割りと簡単に稼ぐことができます。

次のステップではかぶった作品を一つに絞る作業をしました。今回は3つのパターンがありました。
「同じ作家の作品が複数あった時にはどちらかを消す」
「同系統の作品があった場合には決選投票をする」
「同じ出版社の作品が複数あった場合はどれか一つに絞る」

こうした方法で30作品ぐらいに絞り込んだ段階で、いよいよ決め手となる絞り込みを行います。
「チェーン全体で拡販したら5000冊以上売れそうか?」
「大量多面陳列したら映える装丁か?」
「出版社からの強い押しはあるのか」
「参加メンバーの強い押しはあるのか」
今回はこの4つが最終的なチェック項目になりました。

同じ出版社から複数の作品がノミネートされていると安心して外していけますが、最初から1作品しかノミネートされていないと、慎重にならざるを得ません。どうしても推薦してくれた担当者の顔が浮かんできてしまいます。

全店フェア参加作品決定
何回となく外された作品がもう一度復活したり、また外されたりを繰り返し、2時間半ぐらいかけた後で、最後は決戦投票で絞り込むことにしました。投票の結果10位が同点になりましたので、11作品が残りました。

これで決定です。
『大正時代の身の上相談』       ちくま文庫  カタログハウス
『リオ』               新潮文庫   今野敏
『ジャンプ』             光文社文庫  佐藤正午
『カタコンベ』            講談社文庫  神山祐右
『火の粉』              幻冬舎文庫  雫井修介
『メイン・ディッシュ』        集英社文庫  北森鴻
『時の渚』              文春文庫   笹本稜平
『サンドブレイク』          小学館文庫  司城士郎
『床下仙人』             祥伝社文庫  原宏一
『愛こそすべてと愚か者は言った』   角川文庫   沢木冬吾
『風少女』              創元推理文庫 樋口有介

内容的にはミステリー作品が多いようです。
『カタコンベ』は江戸川乱歩賞受賞作品で2か月前に文庫化されたばかりの作品ですし、『時の渚』はサントリーミステリー大賞、文春読者賞をダブル受賞した作品でした。また、『ジャンプ』は本の雑誌第一位でした。
こうした作品は出版社の担当者から自信を持って推薦していただいたものですし店文庫担当者とのダブル推薦もありました。

『愛こそすべてと愚か者は言った』は千葉の書店員が気に入って売り伸ばした作品です。文庫版ではあとがきを書いてしまったほど絶賛している沢木冬吾の作品です。
『リオ』は今野敏の人気警察小説の第1巻目に当たる作品です。
『サンドブレイク』は出版社の女子営業担当が
「私が出張中に発売された作品で、営業に行けなくて書店におすすめできないうちになんとなく終息してしまった作品です。中身は絶対おもしろいです」
と強く主張した作品でした。

幻冬舎からは『檸檬のころ』を敢えて1点だけおすすめしてきました。相当自信を持っていたようでしたが、単価が安すぎて早々に落選してしまいました、それでも、店の文庫担当者の推薦作品の『火の粉』が残りました。若手のうり坊メンバーに人気の雫井修介の作品です。

樋口有介、北森鴻、は全店大仕掛けの候補作品にいつも上がってくる常連作家です。この作家を何とかブレイクさせたいと思っている文庫担当者が複数いるのかもしれません。

ミステリー系の作品が多い中で、ちょっと異色な作品が2点残っています。あまり聞いいたことがないタイトルです。

『床下仙人』は新刊発売以来販売実績が振るわず、返品も多く帰ってきていて、重版がかからなかった作品でした。すでに断裁されて300冊だけ在庫が残っていた作品だったそうです。

その300冊の在庫を、Y書店グループの町田店の文庫担当者が全部引き受けて完売してしまいました。その意気込みから重版されて、各書店に営業を開始しました。山村書店でも2店舗が突出した売上を記録しています。絶版の危機からよみがえっためずらしい作品です。

『大正時代の身の上相談』は丸山も本日初めて見たと言っているほど知られていない作品です。うり坊の多田野が強く推薦して最終候補に残りました。今回の最終候補作品の中で唯一のノンフィクション作品です。

丸山は全作品が小説ではないことも一つの考え方の現れなのだろうと、楽観的に語っていました。

最終候補作品を全点テーブルに並べてみました。
それなりに売れそうな気配が感じられる作品が多いようです。
「これなら売上が取れる」
そういう予感がしたうり坊メンバーが多くいたようです。

選考結果は推薦作品を出していただいたすべての出版社にお知らせしました。同時に最終候補作品に選ばれた作品の出版社には、指定した期日までに商品を取次に搬入していただくようにお願いしました。

11作品の初回投入数は各1000冊としました。どの作品も出版社には在庫がありましたので辞退された作品はありませんでした。11点で11000冊が取次に搬入されます。
店ごとの配分表を送って、取次担当者にセット組みを依頼し、9月28日に全店に送品するようにお願いしました。


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