2015年8月14日金曜日

物語 うり坊とうり坊な人々 27

スタート
3月1日から雑学文庫ダービーが始まりました。
最寄りの店のダービーコーナーに寄ってみると、もうすでに出版社の営業担当者の姿が見受けられました。

「今日から3~4日で一気に全店をまわります」
張り切ってそう語っていたのは、
「活躍の場を欲しい」
と丸山に願った出版社の営業マンでした。

彼が自信を持っておすすめした作品がコーナーの中でも良い場所に陳列されています。
手書きPOPを持参して使っていただくように案内をしていました。追加注文をいただいて別枠のスペースで賞品の展開をしてほしいという提案もしているようでした。
彼の顔つきには、活躍の場を得て、必ず第一位を取るんだという強い意気込みが感じられました。

そうこうしているうちにもう一人顔見知りの営業マンが店にやってきました。和やかな顔つきで挨拶をかわしていますが、水面下での激しいバトルが待ち受けていることを、身を持って感じているようです。

お互いの商品は客層が少し違いますので、本来おすすめする店が違うハスなのですが、この店のようなニュートラルな位置にある店は、良いスペースの争奪戦になる可能性があります。

大手出版社と違って、中堅出版社の営業マンはとても積極的です。うり坊もそこに売上増の活力を期待しています。

大手出版社は最初から棚を確保できていて、新刊コーナーに堂々と陳列できています。それに対し、中堅出版社は棚の確保も新刊の陳列場所の確保も、営業マンの努力次第で決まることが多いのです。

沿線の中核駅を中心に売上を伸ばしている作品の代表例が『話し方を変えると「いいこと」がいっぱい起こる』で、都心のターミナル駅の店で驚異的な数字を上げているのが『電通鬼の十則』でした。
果たして、栄冠はいずれに輝くのか…

途中経過
第二週になっても『話し方を変えると「いいこと」がいっぱい起こる』と『電通鬼十則』のビジネス系の2作品のデットヒートが続いています。

自己啓発本のベストセラーの常連に常に顔を出しているのが、話し方をテーマにした作品です。日本人はよほど話し方に自信がないのか、男女を問わず購買される方が多くいますし、毎年年間ベストセラーにも必ず登場しています。

「話す力」「書く力」伝える力」「考える力」「時間力」を仕事の5力と呼んでいる方がいますし、ベストセラーのテーマが常にそこから生まれています。その原則がここでも生きて売れているようです。

山手線の南側は新規の業態で成功した企業が集まっています。そこではマーケティング関連本や広告関連の本がよく売れています。都心にある店では、伝説とまで言われた内容を文庫化した『電通鬼十則』が爆発的に売れていました。

その地域で活躍するビジネスマンにとっては、バイブルと呼ぶにふさわしい作品なのかもしれません。圧倒的な強さで販売実績を作っています。

この上位2作品に続くのは文字通り雑学系の2作品である『日本の名字と家紋』と『雑学全書』でした。駅系の書店が好んで仕掛け売りをして、良い成績を出すのが雑学を取り扱った作品です。
店を選ばず、ところを選ばず広範囲に売れるのが特徴のようです。3位と4位で頑張っていました。

そこにもうひとつ殴りこんできたのが『そうだったのか現代史』です。TV番組に登場する著者の作品は良く売れます。特にTV番組で書影を見せて紹介されると、売上が跳ねる傾向があります。

最終的に1位、2位を争ったのは三笠書房とPHPの雑学系文庫の双璧と言われる出版社の営業マン達でした。彼らはフットワークが軽く、店への訪問や担当者との話し合いも積極的で、全店をめまぐるしく何度も訪問していました。

あまり店を訪問しない大手文庫出版社とは違った動きを見せて、他の追随を許さない展開となりました。

順位確定
3月の1か月間を闘った雑学文庫ダービーで、最終週に頭差で差し切ったのは『話し方を変えると「いいこと」がいっぱい起こる』でした。

第1位 『話し方を変えると「いいこと」がいっぱい起こる』
第2位 『電通鬼十則』
第3位 『日本の名字と家紋』
第4位 『そうだったのか現代史』
第5位 『雑学全書』

第1位が600冊を超え、第2位と第3位が500冊越え、4位と5位が400冊越えとなっていました。

1か月のフェア期間中の売上は12点で4400冊を超えました。おすすめ文庫全店フェアが5600冊超えでしたので、ほぼ8割程度の販売実績でした。

第1位に輝いた『話し方を変えると「いいこと」がいっぱい起こる』は5月、6月に拡販キャンペーンを実施しました。出版社に訪問し第一位決定のお知らせをした時は社長を始め営業の皆さんに喜んでいただきました。

拡販キャンペーンの打ち合わせでの決定事項
1.     初回投入は5000冊
2.     第一位帯を巻いて拡販する
3.     帯のデザインはメールのやり取りで決定する
4.     拡販期間は5月、6月の2か月間

おすすめ文庫全店フェアに準拠したかたちで拡販を実施することにしました。

結果は2か月間で6100冊超えの実績でした。雑学ダービーではおすすめ文庫全店フェアに対しほぼ8割の売上が取れていたのですが、拡販キャンペーンでは6割以下の販売実績にしかなりませんでした。
少し不満が残りましたが、これまでの雑学系文庫の大仕掛けでは『ナンプレ』の2か月で5000冊が最高売上ですから、『話し方を変えると~』の6000冊以上は雑学系の新記録に相当します。
ちなみにこの作品は7月末までに累計販売実績10000冊をクリアしました。


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