2015年8月4日火曜日

物語 うり坊とうり坊な人々 18

おすすめ文庫全店フェア
絞り込んだ11作品によるフェアを開始する前に、丸山は自作のPOPパネルを2種類作りました。
ひとつはタイトルパネルで、もうひとつは候補作品リストです。うり坊納涼会当日に受けた研修を活かして、企画書もPOPパネルもパワポで作成しました。丸山のパワポデビューです。

そのほかにもお客さま用の投票用紙、投票箱を用意するなど、今までになかった仕事が増えて、それなりに大変な作業が続きました。

10月1日から全店フェアが始まります。そのスタートの前の日に何店舗か店を回ってみました。すると商品の展開場所に一つもPOPがついて居ませんでした。さみしい感じがしましたので、「ないよりましだPOP」を作成して全店に配布しました。

おすすめ文庫全店フェアの売上は順調に推移しました。週単位でデータを作成して候補作品を出していただいた出版社の方々にメールでお知らせしました。
途中経過をチェックして、何回も店を訪問してくださったり、POPを届けてくださったりした方々が多くいらっしゃいました。

中にはどうしたらトップを奪えるのか聞きに来る方や、陳列の工夫を提案される方もいらっしゃいました。そんなところに彼らの関心の高さが伺えました。担当者ごとに特徴的な面を見せていただき、予想していた通りの楽しいフェアになりました。

全店フェアの期間中の販売実績は5600冊を超えました。初回投入冊数に対する消化率は1ヶ月で51%、一日平均の販売冊数は180冊を超えていました。一作品当たりの平均販売冊数は520冊弱です。

一か月の販売実績としては、なかなか良い結果が出たと喜んでいました。次の一か月はだんだんと規模を縮小する店が出てくることが予想されますので、だいたい75%程度の消化率で落ち着くのだろうと言われていました。

フェアが始まってしばらくは『リオ』新潮文庫、『時の渚』文春文庫、『床下仙人』祥伝社文庫の3作品が競り合っていました。
その後、中旬からは『床下仙人』が優位に立ち、そのまま最後まで一度も首位を譲ることなく、二位に200冊以上の大差をつけてゴールしました。

店別の状況
店別の販売実績ではチェーン内一番店で遠藤から引き継いだ鈴木が奮起して第一位を獲得し、惜しいところでいつも泣いているうり坊森山が第二位、都心のターミナル駅の近くの小型店の金沢が奮起して第三位に入っていました。

金沢は出版社訪問で説明役をした小学館の女性担当者から熱心にすすめられて、『サンドブレーク』を押していました。それが祥伝社の営業担当が店を訪問してから態度が変わって、『床下仙人』を押すようになりました。

追加注文が入荷して、同封されていたPOPパネルをつけたことで一気にブレイクして、トータル販売数を押し上げてしまったようです。

「大型店を見に行ったときに使われていたPOPパネルが印象に残って、これをつければ売れるだろうな、と感じて、出版社に同じパネルが欲しいとお願いしました。そしたら本当にブレイクしてしまいました」
本人はこんな風に語っていましたが、出版社の営業担当もその時の話しの流れを飲んだ席で語っていましたが、素朴な地方出身者に愛着を覚えたそうです。

うり坊森山は『カタコンベ』を売り伸ばし、うり坊高木は『時の渚』をイチ押しにしていました。
各店の担当者ごとに力の入れ具合が違って、
「あいつがそれを押すなら、俺はこれだ…」
とばかりに文庫担当者ごとの意地の張合いもなかなか見応えがありました。

1ヶ月の実績を店別作品別に見てみると100冊以上販売していたのが3店舗2作品でした。『床下仙人』がうり坊鈴木と金沢の2店舗、『カタコンベ』がうり坊森山でした。

『床下仙人』は3店舗が突出した販売実績を作っていました。『リオ』、『時の渚』は同じ3店舗で半分程度の販売実績しか作れませんでした。
うり坊鈴木の店ではどの作品も万遍なく売れていましたが、金沢の店では『床下仙人』の実績が他の作品との落差が激しくて、突出した実績を作っていました。
沿線の乗換駅の店も同じような実績が出ていましたので、この2店舗が『床下仙人』を首位に引き上げ、順位を決定づける鍵になったとうり坊は分析していました。

出版社担当者のトップ奪取作戦の勝利者は祥伝社の景浦さんに決まりました。

お客さま投票
お客さま投票は店のおすすめ文庫全店フェアの陳列スペースに投票用紙と投票箱を設置して受け付けるようにしていました。第一位の販売実績が全店で1000冊前後を記録していましたので、売上冊数に比べお客さま投票は少なかったという印象がありました。

今回の企画でも目玉にしようとしていたお客さま投票ですが、一か月の間商品自体は陳列されていましたが、これを買って読んでというのは難しかったのだろうなという反省がありました。
前回の全店大仕掛けの自分たちの経験でも一ヶ月以内に10作品を読むことは大変なことでした。ましてやお買い上げしてとなると無理なことのようにも感じました。

投票の受け付けは11月10日まで延長しました。全部で250人の方から投票いただきました。明らかに組織票と思えるものもありましたが、初めてのことでもあり、それもまた良しとすることにしました。

今回は各出版社から提供いただいたサービス品を景品に加えていました。おすすめ文庫全店フェアの入賞者用の景品として使わせていただきました。

お客さま投票に関しては、『月の扉』の光文社から提供いただいた図書カードを、抽選でプレゼントすることができました。

前年に3ヶ月で10000冊を突破し半年で15000冊をクリアした、驚異的な販売実績に気をよくした光文社の方々の気前のいい行為にうり坊一同とても感謝しました。

お客さま投票の第一位は『愛こそすべてと、愚か者は言った』が第一位、2位に『ジャンプ』、3位に『火の粉』が続いていました。ちなみに販売実績第一位の『床下仙人』はお客さま投票では第7位でした。

スタッフ投票は多くの社員アルバイトが投票した模様で、最終受付の段階では60票が集まりました。スタッフ投票の第一位は『時の渚』と『大正時代の身の上相談』が同数で並び、第3位には『カタコンベ』が入っていました。


前年の全店大仕掛けでは最終的にスタッフ投票で拡販商品が決まっていましたので、同じパターンならば『時の渚』か『大正時代の身の上相談』のどちらかに決まっていたことでしょう。

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