2015年7月30日木曜日

物語 うり坊とうり坊な人々 13

2007年の夏の文庫フェア
2007年6月上旬のうり坊は大忙しでした。夏の百冊の銘柄は直前にならないとなかなか決まりません。だから、山村書店版この夏のおすすめの一冊を決めようとしても、準備期間はあまり取れませんでした。
書店員のおすすめと出版社のおすすめを一点ずつ慎重に吟味して、最終的に一冊に絞り込むのがうり坊のコンセプトになっていました。そのために出版社ごとに訪問したり、本社に来てもらったりして検討会をしたのですが、日程的には非常に苦しい状態で進めざるを得ませんでした。

新潮社や集英社は前年の強力な新刊がありましたし、角川書店は『ダ・ヴィンチ・コード』が前年実績に入っています。相当頑張らなければ前年を上回る販売実績は作れないだろうというのが大方の予測でした。

検討会は新潮社、集英社、角川書店の3社に対し、うり坊と参加希望を提出した店文庫担当者が加わって、それぞれ14~5名が参加して行われました。そして各社1点ずつこの夏のおすすめ作品が決まりました。

2007年夏の文庫フェアおすすめの一冊
新潮社『太陽の塔』森見登見彦
集英社『笑う招き猫』山本幸久
角川書店『ツイラク』姫野カオルコ

商品の手配が遅れて7月に入ってから入荷した作品もありましたので、作品ごとの売れ行きにはばらつきがありました。1点だけおすすめする場合は店での展開が容易なのですが、3点のおすすめとなるとかなり難しい部分も出てきたようです。

そんな中で、前年にも実施した新潮社はノウハウが蓄積されていましたし、文庫担当者の売りたい気持ちを刺激した作品が選ばれたこともあって、他の2社を圧倒する勢いで販売実績を上げていました。
前年の『ナイフ』を上回るペースで売れ続けた『太陽の塔』は6月末の商品搬入から8月末までの販売実績は2700冊を超えました。

角川文庫の『ツイラク』が1200冊弱、集英社文庫の『笑う招き猫』が1000冊にあとわずかという結果でしたので、「山村書店この夏の3冊」はトータルで約5000冊の販売実績となりました。
それにしても、新潮社がいかに強かったかがお分かりいただける結果だと思います。

表彰を巡る争い
2007年の夏の文庫フェアでは、店の文庫担当者の夏の文庫フェアに対するモチベーションを上げるために賞品を用意しました。それまでも、賞品が出ると張り切って売る文庫担当者が多くみられたからです。

3社の出版社から販売促進用のサービス品を提供いただき、山村書店でそれまでに出版社から開店のお祝いにいただいたビール券などと合わせて賞品として、成績の良かった店の文庫担当者に提供することにしました。

6月下旬の商品搬入時から販売実績をカウントし始め、8月15日の段階で途中経過を発表しました。

3点トータルの販売実績
うり坊森山君  276冊
乗換駅の効率店  242冊
うり坊遠藤さん  238冊
うり坊高木君   224冊

銘柄別
『太陽の塔』うり坊森山君   138冊
『ツイラク』うり坊森山君   106冊
『笑う招き猫』うり坊高木君   63冊

うり坊森山君は3点トータルの販売数と『太陽の塔』『ツイラク』の三部門でトップに立っていましたが、『笑う招き猫』だけが圏外の32冊の実績でした。

この成績が発表されて森山君は奮起しました。
『笑う招き猫』の陳列を見直し、展開方法を大きく変えて、猛然と売りに走り、8月31日までに55冊の販売実績を作りだしました。

一日平均3.4冊販売しています。それまでの49日間で32冊とは大違いです。
その結果、8月末までの販売期間トータルでは87冊の実績となり、うり坊高木君を抜き去って逆転で第一位に輝きました。
雑学系の文庫の大仕掛けでは全くいいところのなかった店で、対象商品が小説系の文庫になってからの快進撃は今も続いているようです。

表彰を巡る争い2
最終結果は興味深い結果となりました。
3点トータルの販売実績
うり坊森山   457冊
うり坊高木   340冊
うり坊遠藤   333冊

銘柄別『太陽の塔』
うり坊森山   240冊
うり坊高木   196冊
うり坊遠藤   193冊

『ツイラク』
うり坊森山   130冊
うり坊遠藤    98冊
乗換駅の店    93冊

『笑う招き猫』
うり坊森山    86冊
うり坊高木    79冊
乗換駅の店    65冊

うり坊森山君は4冠を達成しました。
「賞品もらえますよね」
森山君は盛んに丸山に言い寄ってきます。

2007年夏の文庫フェアの表彰基準は夏の文庫フェアのトータル販売実績で対前年比を上回ることが条件になっていました。前年の新刊の目玉商品の数々や『ダ・ヴィンチ・コード』などが前年実績に含まれています。

前年にたくさん販売した店はそれ以上に売らなければなりません。今年の実績の順位より対前年の伸び率を優先した表彰基準になっていますので、残念ながら彼は表彰されませんでした。
「ついてないね、森山君」
「でも、君の頑張りはみんな忘れないから」


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