2015年7月19日日曜日

物語 うり坊とうり坊な人々 2

うり坊な人々①
丸山は横浜の書店で長いこと働き、50歳を過ぎてからこのチェーンに入社しました。横浜の書店時代に書店発ベストセラーの発掘をテーマにして仕事をしていたことがあって、若手書店員の仕掛け売りにはとても興味を持っていました。

入社したころは新規出店やリニューアル店の商品構成や品揃えのプランナーをしていましたが、本社で行われる「うり坊会議」はとても気になっていました。2004年に仕入部のバイヤーになってからはうり坊会議にメンバーとして参加するようになりました。

横浜の書店時代に商品の売り方に関しては成功も失敗もそれなりの経験をしていましたので、仕掛け売りのスペース取り、店頭での陳列方法、POPの使い方など、うり坊の若手メンバーにちょっかいを出すのをとても楽しんでいました。

メンバーの世代交代があった時、自分からまとめ役を買って出て、自然とリーダー的な存在になっていきました。そして、本部スタッフとして現場の売りたがり書店員へのアドバイスを繰り返していきました。

うり坊の活動を支援する立場になって、
「若手が多いこと」
「発展途上であること」
「将来を託す人材を育てたい」
ということを念頭に、ステップバイステップで少しずつ刺激を与えていくように心がけました。

大仕掛けの目標3000冊がコンスタントにクリアできるようになると、
「今回もまた3000冊なの?」
そんな発言は彼らのプライドを刺激して
「それでは5000冊にしましょう」となりました。
「雑学系の文庫ばかりだな」
と言うと小説系の作品に手を出すようになりました。

大手出版社の作品になかなか手を出せない状況を見て、独自ルートで商品を確保するようなことも時にはしていました。

うり坊メンバーが卒業していくと、新たなメンバーを補充しなくてはなりません。ただ誰でもいいというわけではありませんので、それまでの仕事歴や品揃えに対する考え方、総合的な能力などを見極めて誘うようにしていました。

うり坊な人々②
2005年、エリアマネージャー制が採用され、丸山は第二エリアの担当になりました。4月に入社した新入社員は5名だったのですが、目元が涼しげな澤口さんが担当エリアに配属になり、有力店の文庫新書を担当することになりました。

うり坊に誘って、さっそくメンバー入りを果たしましたが、その年の秋に行われた『99%の誘拐』の大仕掛けで4位入賞しました。最初の大仕掛けでめでたく賞品をゲットしたラッキーなメンバーでした。

文庫新書のベストテンコーナーを設置し、その場から売れるスタイルを作ったのは、チェーン店内では彼女が最初でした。とかくベストテンコーナーは情報提供として表紙を見せるだけの店が多いですが、情報提供=販売のスタイルにしようと考えて実行したものです。

99%の誘拐』がベストテン第一位を継続中でしたので、ベストテンコーナーの中で第一位のスペースを多めにとって、1面5冊、10面で50冊の面陳を作りました。もちろん、その場からどんどん売れていきました。

入口のステージと文庫の導入部のエンド台で多面のボリューム陳列を作った上で、ベストテンコーナーでの10面展開はとてもインパクトがありました。売れていることがわかる陳列状態をつくることができたようです。

彼氏が四国で店を出すことになり、結婚して一緒に行ってほしいと言われたそうです。彼についていくことを決めたため、一年足らずで退社してしまってとても残念だとうり坊メンバーに言われていました。

翌年の新人は2名で、そのうちの1名が澤口さんの後任として配属された山森さんです。入社後すぐに行われた2006年5月スタートの『雑学図鑑』の全店大仕掛けでは、新人ながら全店第一位を獲得したラッキーな面を持っていました。

元々うり坊の中にはラノトノベルス系の作品を得意にしているメンバーが少なかったので、彼女の発言はラインナップ検討の際にとても重宝されていました。

入社してすぐに文庫担当になった店は学生が多い街にあり、ラノベ系がとても強い店でしたので充分に実力を発揮できていました。数年後昔ながらの住宅街にある店に異動したら、ほとんどラノベ系の配本がない店で、とても手持ち無沙汰に過ごしているとこぼしていました。

うり坊な人々③
店を回っている時に
「変わった本を平積みしているなあ」

データチェックをしている時に
「なんでこの店だけこんな本を売っているの」
そんな気づきがあった時にはその担当者に声をかけてメンバーに誘っていました。

変わった本を平積みしていた代表が多田野君です。
相模原市にある店を見に行く機会がました。その店はあまり効率が良くない店で、回転率もそれほど高くない店でした。そんな店では品揃えに特色を出すことが重要な要素だと丸山も考えていました。

その店の文庫フェア台を使って、澁澤龍彦作品が全点平積みされていました。普通の店の普通の文庫担当者ではあまり考えられない選択です。
「実は河出書房や筑摩書房の作品が大好きなんです」
本人に話しを聞くと、そんな答えが返ってきました。

「契約社員で入社してまだ日が浅いので、なんとなくとらえどころがありません。おとなしい男で、何を考えているのかあまりよく分からないのですが、自分なりの世界観があって、それに従って品揃えをしているような印象を受けます」
店長はそんな評価をしていました。

澁澤龍彦、自分なりの世界観、そんなキーワードがなんとなく気にかかって
「それなら、うり坊でもんでたくましくしよう」
と考え、さっそく、うり坊のメンバーに誘いました。

メンバーとして月一回のうり坊会議に参加するようになってしばらくすると、いつの間にかうり坊に溶け込んで、
「こいつが仕切っているのか」
と感じてしまうほどの活発さを表に出していました。

飲むのも大好き、騒ぐのも大好き、大仕掛けの作品の絞り込み会議では絶対譲らない激しさも持ち合わせていました。
最初は猫をかぶっていたのでしょうか。


0 件のコメント:

コメントを投稿