2015年7月15日水曜日

ストーリーで学ぶ10万部三連発 7

10万部メーカーのエリアマーケティング
10万部メーカーが店に来た。
「関西で火がついて10万部は突破したんですが、関東ではまだほとんど売れていません。この店で火をつけてもらえませんか?」
「別に仕掛け売りするのは構わないんだけど、関西だけで10万部ってすごいじゃない。どんな仕掛けだったのか教えてくれない?」
こんな会話から、10万部メーカーのエリアマーケティングの方法を教えてもらった。

10万部メーカーのエリアマーケティングのストーリー
関西にも仕掛け売りが得意な店があるし、大型店もたくさんある。そんな店でスタートから仕掛け売りをして、初速がいい感じに出るように仕向ける。
次に、京都、大阪、神戸のエリアをまたいで走っている阪急電車に電車広告を出す交渉を開始する。

広告が決まった段階で、広告掲載のお知らせと、初速の良かった店の商品展開の事例を掲載した注文書を沿線の書店に流して、広告に連動した売場作りのために受注の促進をする。
当然、主要駅のエキナカや駅前にあるキーになる店には必ず訪問して、販売強化のお願いをする。

関西を地盤にしている取次にも、協力をお願いして受注の促進をしてもらう。
阪急電車の系列書店には、電鉄会社の方から広告の掲載と販売促進の通達を出していただく。
外堀を埋め、内堀もなし崩しに埋めていくような営業スタイルで、京阪地区の書店の店頭の一等地を占拠する作戦が成功すると、どの店でも思いも掛けない程売上が強く跳ね上がっていく。

主要駅のほとんどの書店のベストセラーランキングで、1位を占拠できるようになるまでそれほど時間はかからないし、一度跳ね上がった売上を維持していくのはそれほど難しいことではない。
取次の支社に商品在庫を潤沢に持ってもらい、主要店での補充をまかない、商品のボリュームを維持し続ける。中小の店では、品切れを起こさないようなメンテナンス作業を、取次の営業担当者と協議して行っていけばいい。
電車広告自体は一週間掲載が基本なのだが、店頭の一等地でのボリューム陳列の効果は広告掲載終了後でも長く売上を維持する力になる。

マーケティング再構築での巻き返し
新刊発売から2カ月後。
「伝説の営業マンの売り切る技術を参考に、ツールの開発と店頭での演出方法をセットにして考えてみてはどうか」
「今回はSCM銘柄が足を引っ張っているのだから、その取次の影響力の少ない地域でエリアマーケティングを強化して、関西方面で火の手を上げるのもいいのではないか」
私はN氏にそんな提案をした。

話しを聞いたN氏は社内のメンバーと協議して、停滞した仕掛け売りの広がりを再度作り出すための方策を考え出した。
方策は主に3つで構成されていた。
最初のツールは、木製の組み立て式陳列台だった。「50冊以上の注文をいただくと陳列台を差し上げます」というスタイルで仕掛け売りの広がりを再度作る営業強化にチャレンジをするのだ。

二つ目のツールは陳列台とセットになっていた。POPパネル、日本人らしさを表現するディスプレイ用の造花と大きな折り鶴、短冊形のPOP等の拡販用の拡材だ。考え抜かれたコピーが使われたPOPパネルは新鮮だった。
セットには木製陳列台の組み立て方、ディスプレイの見本図などが付いていて、誰でも簡単に陳列台がセットできるようになっていた。
これぞ良質な気づかいの習慣の実践なのだろう。

三つ目はエリアマーケティングの実践だ。SCM銘柄の契約をしていない店の多い関西地区の営業を重点強化した。エリアマーケティングの実践が効果的だった。SCM銘柄の契約をしていない店の多い関西地区の営業は見事に当たった。
京阪神を縦横に走る阪急電車に広告を出して、沿線に展開されている書店へ電車広告に合わせた商品展開を提案した。店頭での大きな商品展開と広告が連動すると飛躍的な売上の拡大が期待できるはずだ。
京阪神の重点強化する店と仕掛け売りが得意な担当者のいる店に営業を掛け、彼らと協力して関西発のベストセラーをつくる戦略を実施したN氏は、ここでも積極的な姿勢を見せてくれた。

木製陳列台、ディスプレイ用のツールの開発、エリアマーケティングの柱としての電車広告に加えて、従来から実施している新聞広告も再度行い、地域を限定したFAX通信をセットにした営業活動が関西地区で強力に展開された。

これまで関東の主要店を中心に営業を強化していたのだが、この新しいマーケティング戦略は見事に成功して、宙に浮いていた2万部の納品先をつくりだし、一気に在庫を消化させてしまった。

また、仕掛け売りの店の広がりが再度できあがったこと、そのタイミングに合わせた日経新聞の半五段広告の掲載が効果を現し、全国的な売上も再上昇してさらに2万部の重版も決まった。
『日本人にしかできない「気遣い」の習慣』はN氏にとって2度目の10万部超え作品となり、累計12万部を突破した。

2万部が宙に浮いた逆境をはねのけたN氏は、売り切る技術をマスターしたようだ。
10万部計画の達成、勉強会の開催をステップにした2度目の10万部突破は、N氏個人の力量アップだけでなく、編集、営業と一体になった、会社としての営業力のレベルアップを果たすことができたのだと判断している。

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