2015年7月17日金曜日

ストーリーで学ぶ10万部三連発 9

どうすれば売れる作品ができるのか
往々にして出版社の多くは、編集は本を作る人、営業は本を売る人という環境に安住しているように見える。
役割が分化してしまったことで、能力の退化が始まったような気がするのだ。

書店の現場を見れば、売れる作品、売れない作品がつぶさに見ることができる。
自分の編集した作品がなぜ売れるのか、なぜ売れないのか、その場に身を置けば自然と見えてくるはずだ。
そうした気付きを多く与えてくれるのが店頭の現場だ。

2010年、最初にN氏と出会ったころ、社内で専属営業マンは彼一人だった。
10万部計画が成功した後で一名が加わり、だんだんと人数を強化したようだが、これも10万部突破作品があったからこそできたことだ。
実績を基に会社の規模を大きくしたいという気分の現れなのだろうとも思う。

それまで編集者たちは兼任の営業マンとして書店を回っていた。社長も関西地区を担当していたし、取次や書店組合の主催する会合にも出席していた。
編集者のほとんどが営業を兼務して書店営業で学ぶことは、読者の望むものが何かを知ること。
書店員を通じて、あるいはお客さまの直接の声を店頭の現場で聴くと、彼らが何を望んでいるのかが自然と見えてくるはずだ。

N氏の出版社では2010年秋から2012年秋までに、3年連続10万部突破作品させている。
その理由として考えられるのはマーケティング発想で本を作り、マーケティング発想で売っているということ。

マーケティング発想で本を作り、営業活動するとはどういうことなのか。
作品を作る時に一番重視するのがメインターゲットは誰かを明快にすること。
ターゲットが明快で、そこに照準を合わせた作品が出来上がると、売り方が決まってくる。照準を合わせた売り方ができれば大きく実績を伸ばすことができる。

企画の内容によって本の作り方も営業の仕方も違いがでてくるはずで、それを意識して、それ相応の局面をその場その場で作っていくと成功が見えてくる。3連続10万部突破が私たちに教えてくれている。

マーケティング発想に基づいた営業
10万部計画の拠点づくりは、メインターゲットの生息するエリアが最適だと思う。
どこに仕掛け売りの拠点を作るかによって、初速のスピードが全く違ってくる。初速のスピードが仕掛け売りの成功と失敗を決めている。

山手線の東西南北のどこを攻めるべきか考えると、営業の方針が見えてくる。
東京駅周辺なのか、恵比寿・渋谷方面か、新宿方面か、池袋方面か。地域ごとに微妙な違いのある客層の、どこがメインターゲットに連なるのか。

仕掛け売りの拠点づくり=テストマーケティングは商品の適性を見るために行うもの。何パターンかの店頭現場を借りて実際に販売をして、お客さまの反応をみてどこの誰にその商品がフィットするのかを探る。それが見えてくれば、その後の営業方針はおのずと決められるし、マーケティング発想に基づいた営業に変わっていく。

売れない本はどうして売れないのだろうか。工夫をすることで売れる作品に変えられるのではないか。誰に売りたいのかが明快にわかる作品を作れば、局面が変わってくるのではないのか。
作ることと売ることが同時進行する関係にもう一度立ち戻るべきではないのだろうか。N氏の三年連続10万部突破がそのように語っているような気がしてならない。あなたはどう思いますか?

10万部突破作品がなくても安定経営をしている出版社はあるだろうが、年間に発行する多くの新刊のうち1本が10万部を超えれば、他の作品は初版のみでも出版社は存続していける。それほど多くは売れない少部数の作品の出版も可能にさせてくれる。こういうところに10万部計画の必要性があると私は考えているのだが…

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