2015年6月1日月曜日

ジャンル担当者の仕事

参考資料 テキストVol.2

01 ジャンル担当者の仕事?

ジャンル担当者の最大の仕事は自分の担当ジャンルの販売実績を上げることだ。そのためには担当ジャンルの小ジャンルごとの構成を良いものにしなければならない。そして、担当ジャンルの立ち位置を知り、店の中での役割から考える必要がある。
店の中心ジャンルであれば、いい場所に大きなスペースを与えられて、競合店に勝てるような品揃えと、それに見合う売上を要求される。それに答えるのがジャンル担当者の仕事だ。

店の中のどの位置にあるのか、棚が何本あるのかを知った上で、小ジャンルごとの棚本数の配分をしながら棚配置を決めていく。
売り場には必ず陽と陰のスペースがあるので、ジャンルの中で中核をなす小ジャンルは陽の場所を与えなければならない。そして小ジャンルごとの親和性を考慮しながら、最適な組み合わせを実現していく。

雑誌の目次にある第一特集、第二特集をページ割りし、人気連載コラムや、定期連載記事のスペースを埋めていくように、ジャンル内の小ジャンルの配置をきめていく。全てのピースを埋めていくと棚配置と小ジャンルの構成が決まる。
小ジャンルの盛衰にも気を配りつつ、季節指数の変化に合わせてアジャストして、常に最適な構成をしていく必要がある。良いジャンル担当者の条件は編集能力の高い人ということが言える。

その中で、エンド平台のような担当ジャンルの中で陽の当たる場所では、売れる企画や商品を展開して売上を稼がなくてはならない。
稼げる場所で稼げる構造ができあがると、特徴的な品揃えをしてお客さまを呼ぶために、多少動きが鈍くても置いておかなければいけない商品を置くことが可能になる。
情報収集を繰り返して稼げる商材は常にプールして置き、時に応じて引き出していけると、安心して売上を作ることができる。

エンド平台、棚前の平台、棚差し商品、面陳商品をどのような商品で埋めていくのかを考え、商品をうまく組み合わせて、見た目の良い、分りやすい棚をつくるのがジャンル担当者の仕事だ。

ベテランの書店員が競合店を見る時に気を使うのが、棚や平台商品に担当者の手が入っているかどうかという点だ。彼らは一目見ればそれがわかるし、売れそうか売れなさそうかもその点で判断できると言っている。


02 店のステージをうまく使おう

店全体の中で自分の担当ジャンルの立ち位置を知ると、店全体を舞台にした仕事の仕方が見えてくる。ただ単に自分のジャンルのある場所の中だけで仕事をしたのでは、つまらない仕事をしているなと言われても仕方がないと思う。
 
店頭の拡販スペースに自分のジャンルの商品をどうやって送り込んでいくのか。店全体で管理しているイベントスペースやフェア台をどのように使わせてもらうか。そんなことを考えるのもジャンル担当者の仕事だ。
活きのいい企画や評判になる企画が実施できると、周囲の人たちの評価は高まるし、次の企画も楽しみにしてくれるのだろうと思う。そのようにして、自分の活躍する舞台を自分で掴み取ることは大切なことだ。

新刊コーナーがあるならば、自分の担当ジャンルの新刊の陳列場所をどうにかして確保する。そういうチャレンジをしないで、自分のジャンルの商品は良い場所に置いてもらえないと嘆いても誰も構ってはくれない。
もしスペースがもらえたなら、ただ商品を置くだけでなく、必ず売れる仕掛けを工夫すること、そして売れ行きをアピールした方がいいと思う。周囲の人たちに知ってもらって、認めてもらうことはとても大切なことだからだ。
 
全店フェアは最初に配分される数は販売実績によって差がつけられるが、自分で仕入れてしまうことも実は可能だし、それによって売れる実績を作ってしまうこともできる。

ただ漫然と送られた冊数だけで考えていてもブレイクスルーは難しいだろう。例えば『脳には妙なクセがある』や『鬼畜の家』のように自分のおすすめタイトルを決め打ちして、入口のテーブルに200冊陳列するだけで流れが変わってくる。
パネルを工夫して、手書きPOPをつけて売れる工夫をすると、間違いなく売れていくのは見なくてもわかるだろう。もちろん売れると確信できる商材を取り上げたから売れているので、何でも200冊置けばいいという訳ではない。

一度ブレイクスルーして大きな実績をつくると、次回からは実績が認めらられて、配本冊数も変わってくるはずだ。工夫を加えることや協力者を得ることで、店全体で仕掛けるスペースを使えるようになる。

200冊のドカ積みで全店フェアの売上が飛び跳ねていった経験を、次のチャンスにも活かせるようにしなくてはいけない。

03 協力者を持とう

売れる企画が思いつかないと、一人で悶々としているほど馬鹿らしいことはない。企画を考え付く人間を探してきて、協力して企画を作り上げることも、一流の人たちが皆実践していることなのだ。
協力者を得ることは他の日常の仕事の中でも重要視しなくていけないと思うし、日々のお付き合いの仕方がそういう場面を作ってくれるはずなので、人脈作りを普段から行っておくことの必要性を理解してほしい。

他の店を毎日廻っている営業マンは多いし、彼らから情報を集めれば活きのいい企画の情報が得られるだろうと思う。
出版社の営業マンに付き合うことで、1000冊越えした作品に出合ったこともあった。周囲にいる人間の底知れぬ力に気づけば、その力を借りればいいことなのだ。

仕掛け売りの始まりの6種類のパターの中で一つは他店情報を得て真似して売ってしまうやり方だし、書道の世界ではお手本を真似することから技術を習得していく方法が確立されている。
真似することを卑下することは必要ないし、真似した先に自分なりのスタイルなり、ノウハウが確立できれば、それはそれでいいことなのだと思う。

これらの方法は出版社の営業マンを協力者として抱えているからこそ出来ることだと思うし、彼らとの日常的な付き合いがそういう情報を引き寄せていることを理解してほしいと思う。

先輩社員の協力を得ることも大切なことだと思う。経験知を多く持っている人間の力を自分のものにすることも大切なことだ。胡散臭いとかうるさいとか考える前に、先に生まれた彼らに敬意を払って教えを乞うべきだろう。

社内、社外を問わず人脈を持つことはビジネスの世界では最も重要視されていることだ。人脈のつくり方について難しく考えることはなく、自分の付き合いのレベルを少しずつ広げていけばそれは可能になるはずだ。

かつて人脈を作るために意図的に出版社訪問を繰り返したこともあったが、店に来る営業マンとの付き合いからでも、人脈を広げることは可能だと思う。

彼らに他の書店を紹介してもらうのも一つの方法だし、彼らとのコラボ企画もしていいことだと思う。



04 売上をつくるポイント

売上を構成する要素を分解して考えてみると良いと思う。例えば新刊と既刊と比較してみるのも一つの方法だ。新刊の依存度が高いか低いか調べてみると、ジャンルによっては影響力が大きい場合もでてくだろうと思う。

そうした時にいつも注目して見ているのは月間ベスト50のデータだ。ジャンル別の月間ベストの前年実績を見ると、どの商品が前年の売上を牽引したかが見えてくるし、今年の商品でどれだけ稼げば前年をクリアできるかがわかってくる。
前年に200冊越えの商品があったとして、今年はそれに見合った売上を作る商品がないとわかった時には、仕方がないと諦めるか、対策を取ることを考えるかで、仕事の質が決まってくると思う。
普通、銘柄的に200冊越えは無理だと判断した場合は、100冊越えの商品を二つ作ることを考える。そのための商品の仕込みや仕掛け売りの方法を考える。それらの作品でうまく稼ぐことができれば、前年実績はクリアできるはずだ。

同じようにベスト10までの冊数や、50位までの冊数の総数を調べておいて、前年実績をクリアする方法を考えていければ、必ずクリアできるだろうし、安心して仕事ができるようになると思う。
 
ベスト50のデータでは前年をクリアしているのに、トータルでは前年を下回るというケースがあった場合は、棚前の商品の販売数や、棚差し商品の販売数がどうなっているかチェックすべきだと思う。
月間2~5冊未満の売上を定点観測すると改善点が見えてくる。要するに棚前の平台商品の品揃えのチェックだ。
陳腐化した商品を積んでいたり、売れ行きの悪い新刊をそのまま放置したりするとこういうことが起きてくる。そういう意味で商品の鮮度管理が日常の仕事になっているかどうかが境を分けると思う。

もうひとつは棚差し商品の売上の動向だ。月次の1冊売上のアイテム数を定点観測すると流れがわかってくる。これは棚ごとに管理すると良いと思う。棚ごとの品揃えの良し悪しが売上に大きく影響してくるからだ。


店全体で管理するフェア台で企画を実施した場合は必ず記録しておくべきだろう。前年はフェアをしたのに今年はしていないとなったら、その分だけ売上は苦しくなってしまうからだ。

05 担当ジャンルの販売ステージを整える

ベスト50位までの商品の売上を上げるには、それなりの舞台を整える必要がある。ジャンルによって販売冊数に違いはあるが、文芸や文庫、新書やビジネスでも、ベストテンに入るような商品の売り方には共通するものがある。
書店発ベストセラーをつくる時の売り方は、週売40を目指して9面~12面の多面展示のブロックをつくるスタイルだ。
店の入り口近くにテーブルやワゴンを使って1台1アイテムで何台か並べていくと、その集積がお客さまへのおすすめ提案ゾーンになった。そんな場合にはジャンルの違う商品が並んでも違和感なく陳列することができる。

お客さまにおすすめする商品の陳列は明快性を高めることで訴求力も高まっていく。1台1アイテムの陳列は、1台ごとに何をおすすめしているのかが見てすぐにわかる。
そのわかりやすさがお客様に伝わることで、販売実績を結びついていく。
1台に複数の商品を詰め込むと、散漫になって何を売りたいのかわりにくくなって、販売実績をつくれないこともある。
ボリューム感も訴求力という点では強く影響する要素だ。あんこを使って上げ底にしてでもボリューム感を出すのはよくやる手口なのだが、大きな販売実績をつくるには似合わないやり方だと思っている。
販売員の心意気をお客さまに伝えるという意味合いからすると、どうしても姑息な手段という印象を免れない。

担当ジャンル内に新刊コーナーや話題の本のコーナーがあれば、そこの舞台を整えることも自分の仕事となる。ただ並べればいいという訳でなく、販売員の心意気がお客さまに伝わるような陳列形態にすることが重要だ。
1台に1アイテムが取れるスペースを持てればそれに越したことはないのだが、1台に複数の商品を置かざるを得ない場合には、商品やジャンルごとの親和性を考慮して陳列しないとその場の雰囲気を壊すことになる。

新刊コーナーの陳列方法でも、1面積みから2面積みに変えると売上が大きくなる事例もあったし、4面積みや6面積みを組み合わせて訴求力を高めていくやり方も必要だろうと思う。
同じやり方を繰り返すだけでなく、常に新しい売り方にチャレンジしていくことが求められる。商品の親和性とボリューム感の創出で舞台を整え、ベスト50の前年の実績をクリアできるようにしてほしい。


06 年間1000冊以上を3本つくる

2008年の後半から2009年にかけて、多くの作品の仕掛け売りを繰り返してきたジャンル担当者がいた。
彼はその仕掛け売りのおかげで陳列の仕方、商品手配の仕方、事前指定の取り方、POPのつくり方・使い方など、数え上げたらきりがないほどの気付きを得て、仕掛け売りの技術をマスターした。

他の会社で文房具の担当ばかりしてきて、入社してすぐに新店に配属されて文庫新書の担当になった。文房具の世界でも仕掛け売りはあるし、それなりに経験してきたので、やり方は分かっているつもりだと彼は言っていた。
だが、書籍の仕掛け売りはなかなか奥が深い。特に売りたがり書店員の仕掛け売りは一回の注文のロットが大きくて、成功と失敗が大きな差になって跳ね返ってくるから、度胸がないとなかなかうまくいかない。

「年間に1000冊超えを3本つくる」が、彼を個人的に指導した時に設定した目標だった。
「こんな実践課題には初めて出会った。途方もない数字だし、ひとつの商品を1年間継続して拡販すること自体が初めての経験だったし、その難しさも味わい尽くした」
「とても無理だと思ったこともあったが、それでも何とかこなすことができたし、やるべきことをしっかりとやれば、結果は付いてくるものだと実感させられた。なせば成るものだと思えたことが、最大の自信につながった」

「仕組みに乗せて売ることで、いつの間にか1000冊を越えてしまうのは、不思議な体験だった。仕組みをいかに作るかは知恵の見せ所だし、その知恵の出し方で協力してくれるメンバーが勝手に向こうから現れてくることも新鮮だった」
彼はそんな風に語っていた。

人をいかに巻き込むかは人それぞれのやり方があるのだろうが、巻き込む人数によって、結果として出てくるアウトプットが違ってくることも、仕掛け売りの実践の中で彼がマスターしたことだ。

仕掛け売りにパターンがあることも実体験として教えた。パターンごとに違いはあるが、どのパターンでも1000冊越えは狙えるし、自分の力で、仕組みを利用して1000冊越えをすることに快感を覚えたようだった。


07 エンド平台と棚前の平台~

1000冊レベルの売上を稼ぐのではなく、100冊単位の規模の場合は一等地での展開をしなくても、担当ジャンルのエンド平台を使って売上を作ることができる。

小規模の仕掛けや季節商品の仕掛け売りなどはエンド平台で実施することが多い。また、新刊の売れ筋商品でパネルをつけて商品展開する場合でも、30冊~50冊レベルの商品量で46面の展開で行うことはよくあることだ。
全ての商品が大きな仕掛け売りの対象になる訳ではないので、店の一等地での大きな展開と、エンド平台を使った小規模の仕掛け売りをうまく使い分けると良いと思う。

新刊が発売して10冊入荷した。1週間以内に7冊売れた。
このようなケースで、仕掛け売りをしてみようと思うけど、いきなり100冊展開は自信がないと思うような時には、エンド平台を使って50冊程度の仕入れで、4面や6面で展開するテスト的な仕掛け売りをすると良いと思う。
結果が出れば仕掛けの展開を大きくしていけばいいのだし、それほど販売実績が芳しくなければ、そのまま終息に向けていけばいいと思う。

エンド平台は棚が付いているわけではないので、視界をふさぐことなく商品をある程度の高さまで積み上げ、ボリューム感を出すことができる。
棚前の平台とは続いているので、積み上げる商品の高さを変えることで、場所の性格の違いを強調することができる。

平台は通常3列か4列の商品を積むことができる。当然、売れる商品が手前に来て、売れ行きの劣る商品が奥になるようにする。エンド平台で商品の在庫量が多いために奥に高く積む人がいるようだが、これはいいやり方ではない。
あくまでも売れ行きに応じて手前から奥へと商品の並びを調整するのが基本だ。そういう陳列をしていると、自然と手前が低く奥が高くなっていく。最初から奥を高く手前を低くするやり方は邪道である。


棚前の平台も同じく手前から奥へと売れ行きの順に置いていく。新刊はなるべく手前に置いて、奥にはロングセラーの基本的な商品を置くと良いと思う。

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