2015年6月5日金曜日

売り方で販売量は劇的に変わる

POPのキラーコピーがロングセラーをつくる

自己啓発の棚前に一面だけ積んで、「地味ですがいい本です」というコピーのPOPを貼りつけて、ずーっと長い間売り続けて、5年で500冊近くまで売り伸ばした作品がある。
『頭が良くなる思考術』白鳥晴彦著はこれこそおすすめ本の原点だ、と言えるような売り方ができた作品だった。
『超訳ニーチェの言葉』がベストセラー街道を突っ走ってミリオンセラーになった時には、同著者の作品ということで一時期6面積みをしましたが、基本的には自己啓発の棚前に一面陳列で長いことおすすめ続けていた。
POPを貼った本はカバーの色が褪せてきてしまったが、あえてそれを見本として使い続けている。
タイトルが良くて、装丁も黒くすっきりしていて、黄色のペンを使ったPOPのコピーがとても映えて見えた。ハードカバーで小B6サイズがしっくり手になじむような本のつくり方をしている。

中身はニーチェの言葉を超訳した哲学者が書いた思考法の本だ。
小さな本にこぢんまりとした小さめのPOP用紙を貼り、黄色の文字で「地味ですがいい本です」というコピーが書いてあるだけ。ほかには何の情報も記されていない。
このコピーは一方でお客様の目を引くアイキャッチャーの役割を果たして、もう一方で商品を簡潔な言葉で紹介する両方の意味合いを持っていた。これが本と読者をつなぐ魔法のコピーだったのだと考えている。

おすすめを始めて3年ぐらい経った頃、300冊以上の売行きが認知され、出版社の営業マン全員が販売促進をする、売れ筋のおすすめ注文リストの一面にアップされた。そして、拡販銘柄に取り上げられたおかげで全国的に売れて10万部を超える作品になった。
もちろん、どの店でも「地味ですがいい本です」というPOPが使われた。
POPや帯によってベストセラーが生まれる事例はたくさん聞いている。ただ、こんなシンプルな言葉で、とても長い時間をかけてベストセラーになったのは私にとって初めての経験だった。


響くPOPのコピーのつくり方


POPのコピーのつくり方のひとつとして不安を煽るやり方がある。
90%の人は健康に良くない食生活をしている」とか、「その食習慣が成人病の原因」といったコピーは、不安を煽ることで安心させてくれる商品に目を向けさせる狙いを持っている。
コピーを考える方法として、本の表紙を万遍なく見て、響くフレーズを探すやり方がある。『覚悟の磨き方』のPOPを書くときに使ったやり方だ。
表紙には著者や編集者のこの作品に対する思いを書き込むことが多い。タイトルの他に表紙に書かれた文章は3つあった。
「時代のすべての異端児たちへ」
「不安と活きるか。理想に死ぬか。」
「幕末の天才思想家、胸に迫る熱い言葉」
POPのコピーにしたいフレーズは2行目の「不安と活きるか。理想に死ぬか。」なのだが、表紙に書かれてしまってはPOPのコピーとしては使えない。そこで、本を裏返して裏表紙をみた。そこには「後悔しない生き方とはなにか?」と書かれてあった。そしてその下には4行の文章が書かれてあった。
時代の常識をことごとく破り
幕末の英雄たちに大きな影響を与えた
天才思想家・吉田松陰に学ぶ
自分と仲間の魂に火をつける方法
この瞬間「いだだき!」と思って、このフレーズをコピーとして使うことにした。
陳列する際には裏表紙を見せることはないので、本を手に取らない限りこのフレーズをお客さまが見ることはない。出来上がったPOPはこんな感じだ。
後悔しない生き方
とはなにか?
自分と仲間の魂に火をつける方法
この本の本質は何かと考えたとき、行き先が不透明の時代に人は右往左往することが多い。幕末の時代もそんな時代だったのだが、吉田松陰という人は自分の信念を貫く生き方をした人だ。
その生き方の本質を突いたコピーができたことで、この本は読むべき価値があると宣言した気持ちになった。だから500冊以上の販売実績を作ることが出来たのだと思う。

響くPOPのコピーのつくり方2


あとがきは著者本人が書いている場合と、解説者が書いている場合があるが、本人の文章は本を書いた熱意がそのまま籠っていることが多いので、コピーとして使えそうなフレーズを探すことができる。
解説者が書いている文章は作品の成立の背景とか、過去の著作の履歴の中から作品を評価する文章が書かれている場合がある。そのあたりからストーリー性を読み取れるフレーズがあればそれをPOPのコピーとして使うことができる。

店が変わって、もう一度『覚悟の磨き方』にPOPをつけることになった時、私はこのパターンを思い出してコピーを探すことにした。
早速、著者本人が書いたあとがきを読んでいくと、
「吉田松陰と言う存在は、没後150年以上たった今なお『君は本気で生きているのか?』と私に問いかけてきます」
という文章に出会った。その瞬間POPのコピーは決まった。
君は本気で生きて
いるのか?
時代に新しい風を吹かす
左サイド上の角に三角形をつくるように赤字で担当者おすすめと入れてPOPは出来上がった。こんなに簡単に探しだしたコピーなのに、このコピーも好評で300冊以上販売実績を作ることができた。
POPのコピーは「この本を読めば本気で生きる生き方のヒントが得られる」と思わせるものが必要だし、著者の思いやこの本の本質を伝えるのも重要だと思う。それができたから、このコピーを見たお客さまの心にも響いたのだと考えている。
もうひとつコピーの宝庫と考えているのが目次だ。著者の思いがそのまま章立ての文章になることも多いので響くフレーズが隠れていることが多い。
不安のない生き方
死ぬ気とはなにか
いつでも死ねる生き方
時代に新しい風を吹かす
目次を見ただけで、使えそうなフレーズをこんなにたくさん見つけることができた。

POPを描くためにはこんなやり方もある。それで作品の本質をうまく表現するフレーズを探せれば、出来上がったPOPはお客さまの心に響いていく。

ボリュームを上げると売上は倍加しますよ


社長力養成講座』は小宮一慶氏の養成講座シリーズ最新刊として、20093100冊入荷して仕掛売りがスタートした。もともと小宮氏の養成講座シリーズは売れ筋作品であり「発見力」「数字力」「解決力」「読書力」が発売されていて、どの作品も300冊程度の実績を上げていた。

シリーズ5作目として「社長力」が出版されたのだが、社長本の需要は大変大きいものがある。周辺には企業が多くあり、それぞれの会社に社長がいるし、社長になりたい役員の方も多くいる。
大概の企業は社長によって業績が大きく変わる。V字回復をした社長や黒字経営を何年も連続している社長の記録はとてもよく売れる。

「社長力養成講座」のメインターゲットは社長そのもの。また、社長予備軍も顧客対象となる。経営マインドを持って仕事をするビジネスマンにとっても格好の入門書となるはず。
つまり、上昇志向を持ったビジネスマンすべてがこの本の顧客対象となりうると考えた。

ある出版社の営業マンが複数の出版社から社長本を20点程度集めてフェアをしないかと提案してきた。自社の作品は4点ほどで、残りは他社の作品が16点ほどリストアップされていた。
看板は自分が作って持ってくるというので、場所を設定してフェアを始めてみると、とても好調に売れていった。彼のリストの中にはなかったのだが、そのフェアにこの『社長力養成講座』も含めたら、フェアの作品の中でもダントツな売れ行きとなった。

最初は店の入口を入ってすぐ左側にあるビジネス書の拡販スペースで、新書のベストテンコーナー寄りの角に、6面積みの展開で仕掛け売りをスタートさせた。3月中の一日当たり売上は3.2冊だったが、4月になって、
「ボリュームを上げると売上は倍加しますよ」
と伝説の営業マンに言われて、商品手配をして、在庫量と展開スペースを大きくした。

陳列面数を9面にして在庫数を300冊規模にしたところ、一日平均売上は6.3冊に上昇した。
「頭のいい説明!すぐできるコツ」はワゴンの場所を移動して成功したが、この作品では陳列量で売上が劇的に変わることを教えられた。
4月から4ヶ月連続で200冊以上の売上を記録し、ビジネスベストテンのコーナーでは約3か月間第一位を続けた。
小宮一慶氏の養成講座シリーズはよく売れる作品なのだが、この作品だけは累計では1200冊以上の実績が出て、通常の作品よりも4倍の販売実績となった。


最適な位置が成功をもたらす

『日本一やさしくて使える会計の本』は伝説の営業マンからすすめられた作品で、配本時から200冊展開でスタートした。会計のジャンルはもともとその店の強いジャンルだったので、1,000円新書ということもあってきめた部数だ。
最初に商品を展開した場所は会計本のエンド平台だ。8面積み、一面25冊のボリュームで、POPやパネルをつけてスタートした。ところが、売上が芳しくない。200冊も展開しながらこの程度の売上ではこの仕掛け売りは失敗してしまう。

200冊展開でスタートということは少なくとも500冊以上売るための申込部数で、200冊売れればいいというわけではない。初速を大きくできないとこの本のおすすめは失敗してしまう恐れがでてくる。
何故売れないのか、理由は何かと考えてみると、思いのほか単純なミスがあることに気づいた。本の中身は会計本でも、想定している読者は経理や会計に携わっている専門家ではなくて一般のビジネスマンだ。
専門家が集まってくる会計本の場所で展開しても、想定読者が違うから売れないのは当たり前。「会計本だから会計本の棚のエンド平台で展開」という安易な発想がいけないのだと気付き、商品の展開場所を変えることにした。

レジの斜め前にある柱の前のテーブルに移動したとたん売上が跳ねていった。店の入り口からビジネス書の棚方面に向かうメイン導線上に位置している場所なので、入店したお客さまの誰にも目に留まる確率の高い場所だった。
「会計を知らないビジネスマンはいらない」的な乗りのPOPが効いて、売上はどんどん上がっていき、ビジネス週間ベストの第一位を何週か継続して、累計売上は700冊を超えるまでに売り伸ばすことができた。

想定読者に気づいたことで、展開場所を移動させたことで、一等地のいい場所での200冊展開になったことが見事に当たって、会計本の入門書としては異常な数値となる売上を記録することができた。


ビジネス書の棚で実用書を売る?


ビジネス書の棚で実用書を売ろうとした事例を紹介しよう。実用書担当者が企画して、私がバックアップして実施した企画だ。事務所でデータチェエクしている時、隣の席の実用書担当者とこんな会話をした。

「夏休みがもうすぐ始まるけど、ビジネスマン向けに何か面白いネタはないでしょうか?」
「夏になると小さな子供を持つお父さんは子供を海に連れて行く。山にも川にも行くかもしれない。子供の前で裸になる機会が多くなる。そんな時お腹が出ているとちょっとカッコ悪い。今のうちにお腹をへこませておきたい。でもハードな減量作戦はできそうにない。スロトレなら、できるかもしれない。そんなふうに考える人は、この店にたくさん来店されているだろうから、スロトレでおなかを引っ込めるという提案でどうだろう
「それだったら食いついてくるかもしれませんね。小学生のお子さんがいるお父さんは30代から40代のビジネスマンのはずです」
「お父さん向けの企画だとしたら店のメイン客層にジャストフィットするね。ターゲットは小さな子供を持つビジネスマン。彼らが一番行きそうな場所ってどこだろう。店の入り口左側のビジネス書のおすすめ本が並んでいる棚か。だったらそこがいい。その場所の真ん中の棚の上の段一段を使っていいよ」
そんな連想ゲームのような感じでこの企画は始まった。このPOPが入口に出ていると、もうすぐ夏休みという季節感が出せるから、一石二鳥の企画だと思った。

商品は何店舗かで仕掛け売りの実績が出ている『ストレッチメソッド』を3面、30秒ドローイング2面 、隙間に新書版の『一日6分痩せる体をつくる』を1面 で棚一段を埋めた。
30秒ドローイング』はメタボ対策にも応用可能と判断し、4050代のサラリーマンも視野に入れられるかなと思い選んだものだ。

始めてみると思った以上に売上が取れて、補充の状況で面数の入れ替えを随時行った。結果は6/20から8/31までの期間でチェーン内他店との売上比較で検証した。
3点のうちストレッチメソッドは中央線沿線の店が一番 104冊売っていた。30秒ドローイングは自店が一番で同じく104冊。3点合計では自店が一番の実績で197冊だった。

1030日調査での累計売上 は『ストレッチ・メソッド137冊、『30秒ドローイング158冊、一日6分痩せる体をつくる82 となっていて、トータルでは約4ヶ月間で377冊の実績だった。雑談から生まれた企画にしては、ずいぶん大きな売上を稼いだことになる。

2009年の忘年会シーズンを前にビジネスマン向けの実用書企画第二弾が始まった。

商品は「おとなの箸袋おりがみおかわり」1点で、ビジネス書のおすすめ本コーナーで始めた。成功体験を積んだ担当者は工夫を重ねて、次々と企画を提案してくるようになった。


担当者の売る気で売上順位は変わる


2014年1月~11月のベストを集計してみた。
1 脳には妙なクセがある         6 マスカレ-ド・ホテル
2 海賊と呼ばれた男上          7 ル-ズヴェルト・ゲ-ム
3 ラバーソウル             8 鬼畜の家
4 下町ロケット             9 白ゆき姫殺人事件
5 海賊とよばれた男 下         10 マスカレード・イブ

ちょっと他の店とは違う作品がベストスリーの中にいるような気がする。
文庫新書担当グループの押しがあるかないかで、売り方が変わり、結果としてベストの順位が変わってしまうのが面白い。

『脳には妙なクセがある』は6月に行った2年目女子対40代男性の営業マン対決を戦った作品で全店フェアに参加している作品だった。全店フェアでも一位をとって年間ベストでも一位になるということは半年間拡販を続けてきたことの証しでもある。

8位に入っている『鬼畜の家』は10月の全店フェアで第一位になった作品だ。4月の発売以来文庫担当者が仕掛けて売っていて、それが縁で全店フェアにノミネートされ、この店で売り伸ばして見事一位になった作品だ。これから拡販時期に入るのでここから伸びていくはずだ。
作家名で見てみると百田尚樹、池井戸潤、東野圭吾、湊かなえなどのビックネームの中に池谷裕二、井上夢人、深木章子という名前が入ると違和感を感じる人も多いだろう。作家の名前で売れたのではなく書店の担当者の強い押しで売れたということが如実にわかる。次点には『本能寺の変431年目の真実』が入っていてこれも3月に行われた全店フェアの第一位に輝いた作品だ。著者はやはり無名の人だった。

2014年1月~11月のベスト上位3点を売上金額で出し直してみた。
1 『ラバーソウル』
2 『脳には妙なクセがある』
3 『海賊と呼ばれた男上』
順位が逆転している。
売上貢献度では『ラバーソウル』が第一位なのである。井上夢人の作品で、6月の発行時から文庫担当者が押して売り続けている作品だ。980円という単価なので他の文庫の1.5倍の売上金額を稼いでいると思うと褒めてあげたくなる作品だ。
新書も文庫と比べると単価が高いので金額でベストを出すと上位に入ってくることがよくある。金額を稼ぐのか冊数を稼ぐのかどちらを選ぶのかは担当者次第だ。

陳列場所によって売上は変わる


1213日に配本があったダイヤモンド社のビジネス書新刊3点は、ジャンルもバラバラだったし、配本数も少なかったのでどこに陳列するか迷った。
通常は10冊入荷や7冊入荷だとまずは棚前に積むことを考えるのだが、この日は何かインスピレーションが湧いてきて、ビジネス書のおすすめ本コーナーに3点とも並べて陳列してみた。

休み明けに出てきて売上データをチェックしたら、どういう訳か3点とも3日間で4冊売れていた。
『ビジネス・クリエ-ション!』10冊入荷、2,1,1
『フリ-ランスのための一生仕事に困らない本』10冊入荷、0,3,1
 クラウドファンディングで夢をかなえる本』7冊入荷、0,2,2
3点とも日にちごとの売上は違っていたのだが3日間で同じ販売冊数だった。こういうことも珍しいと思うし、どうしてそうなったのかは今のところ不明だ。
「こんな珍しいことがあるから本の陳列は楽しいのだ」と改めて感じさせてくれた作品達に感謝している。

陳列場所によって売上が変わることは毎日起こっている出来事だ。ダイヤモンド社の新刊3点はおすすめ本のコーナーに置いたことから初速の良い新刊を発見することができたのだし、インスピレーションが間違っていなくてよかったと思っている。
商品の陳列場所をどこにするかは書店員の考え方ひとつで決まる。新人は入荷冊数で陳列場所を決める傾向があるのだが、ベテランになると本の表情を見て陳列場所をきめるようになる。たとえ5冊の入荷でもテーマが面白くて売れそうに思えれば、新刊コーナーに上げ底にしながら大量入荷部数の書籍と渡り合えるように堂々と積むこともある。

新刊が出たばかりの時期に著者と編集者が店に訪ねてきた。その新刊は自己啓発の棚に面陳されていた。
「どうしたらおすすめ本のコーナーに積んでもらえるのですか」
「売れそうと思ったものはそこに並べますが、ほどほどだった場合は棚前に積みます。だけど棚前の陳列でも初速が出ればおすすめ本のコーナーに移します」
「だったらネットで自分の作品の紹介をするときに、この店に置いてあるとアピールしておきます」

するとその作品が次の日から売れ出した。10冊入荷で5冊売れた段階で、約束したわけではないが、著者の思いを汲んで50冊の注文をした。そして、おすすめ本のコーナーに置いて、長いこと2面積みして売り伸ばしたこともあった。



仕掛けた本が必ず成功するとは限らない




プロ野球でも3割バッターを一流打者というように、仕掛け売りの世界でも3割の成功率を取れれば、良しとしていいのではないかと思う。私も失敗することは多かったし、それにめげずに仕掛け売りを繰り返してきた。90年代の失敗の記録を紹介しておこう。

柳沢桂子という著者は草思社や岩波書店からエッセイを出版していて、まずまず売れる本が多かった。難病で入院していて、入院先で原稿を書いていることも多く、もう長くはないともうわさされていた。それが、奇跡的に病気が治って退院をしたという。その間のさまざまな出来事が「ふたたびの生」というタイトルで出版された。
入荷して初日に4冊売れた。すぐに出版社に電話した。100冊欲しいと伝えたところ、60冊で様子を見て欲しいという。なかなか渋い返事だ。新刊コーナーの一角に6面積みで展開したが、なかなか売上が伸びていかない。POPも取り替えてみたが、やっぱり、思ったように売れていかない。
初日に4冊売れた本だからと躍起になって、数週間多面積みを続けたが、結局、追加を取るまでには売上は伸びなかった。どうして売れなかったのか、思い当たることはなかった。
著者のネームバリュー、過去の実績、本のタイトル、装丁、テーマ、初日の売れ方、今までの経験からは成功するはずだったのだが…
後で聞いた話しでは、初日に売れた4冊は一人の方が買っていったという。初日に4冊という過去の成功事例に乗って仕掛けてみたが、実はそこにデータの読み違いがあったことであえなく失敗となってしまった。

新潮文庫に『家族依存症』という作品があった。心理学の専門出版社から親本が出ていて、アダルトチルドレンという流行語(?)を生んだ斎藤学氏の一番売れた本である。一週間ぐらいで売り切れて、出版社はまだ重版を決めていなかった。
文庫担当者を呼んで、これを仕掛けたいから200冊注文しておいてと頼んだ。私から依頼されたといえば何とかなると思うからと伝えた。しばらくして、「品切れなんですが、ちょうど手持ちが持てたから送るという返事が来ました」と聞かされた。
入荷してびっくり。なんと500冊のだった。200500は聞き間違いが起きやすいものなのだが、こんなところで出てしまうとは
用意していた75cm角ぐらいの平台に500冊を積むと、随分と高くなる。ただ、本の厚さが1cmもないので全部積めたが、売れても、売れても低くなっていかない。積み上げた商品が減ると、売れているという印象をお客さまに感じさせられる。それでさらに売上が伸びるものなのだが、結局、残り170冊ぐらいになったときに打ち切った。
売れて在庫が減って追加してまた売れるという流れがないと、うまくいっているように感じられない。結局450冊以上は売ったのだが、仕掛けを継続する気にはならかった。

0 件のコメント:

コメントを投稿