2015年6月25日木曜日

斉藤塾 番外テキスト 2010

ミリオンセラーストーリー

書店発ベストセラーをつくるストーリーの変遷
90年代に考えていた自然発生的な書店発ベストセラーのつくり方
.誰も気づかない、手を出していない、だけど売れそうな作品を大量に仕入れる
.多面展示+POPの販売方法でその店だけで売る
.そのうち他店でも売れていることに気づき、真似して売り始める
.真似した店でも売れていくと全国的な売れ方になる
.その作品はベストセラーになる

00年代の出版社と協力して書店発のベストセラーを作るストーリー
1. 店を絞って集中的に商品を投入し、特定の店で販売実績を作る
2. その店の販売実績を持って他の書店に営業し、仕掛け販売の書店を増やす
3. 結果が出たら新聞広告を出す
4. 全国的に仕掛け販売の展開を広げる
5. 全国的な展開ができると10万部は可能となる

10年代塾が始まってからの10万部計画のストーリー
1.   書店員を巻き込んで仕掛け売りの拠点をつくりそこで影響力のある強い売上を作る
2.   拠点の売上に基づいた営業で、仕掛け売りの広がりを作る
3.   売れていることがわかる新聞広告と、売れていることがわかる注文書で受注を促進
4.   販売数の伸びに合わせて重版のロットを拡大する
5.   チェーン本部や取次ルートで仕掛け店を増やし全国的な商品展開を作る

塾生による10万部計画を成功させるための7つのステップ
1.   売れている本を選ぶ→1ヶ月で1万~2万部程度
2.   計画書を作る→実施項目と目標値を明確に
3.   基幹店をつくる→客層とのマッチング重視影響力のある店で強い売上をつくる
4.   仕掛け店を増やす→基幹店で売れている状況をネタに注文書作成
5.   新聞広告を出す→売れている状況を読者・書店・取次に発信
6.   重版のロットの拡大→売り上げの伸びに合わせて拡大
7.   全国的な展開→チェーン内ルートで拡大       1ヶ月目 2万部
         チェーン本部ルートで拡大      2ヶ月目 3万部
         取次ランキング上昇         3ヶ月目 4万部
         他のチェーンにも波及        4ヶ月目 5万部
         取次ルートで拡大          6ヶ月目 10万部

仕掛け売りの拠点をつくる
90年代→  誰も気づかない、手を出していないけど売れそうな作品を大量に仕入れる
多面展示+POPの販売方法でその店だけで売る
00年代→  店を絞って集中的に商品を投入し、特定の店で販売実績を作る
10年代当初→書店員を巻き込んで仕掛け売りの拠点をつくる
そこで影響力のある強い売上を作る
10年代前半→1ヶ月で1万~2万部程度の売れている本を選ぶ
客層とのマッチングを重視して基幹店をつくる
影響力のある店で強い売上をつくる

10万部計画のストーリーの第一段階、拠点(基幹店)をつくる部分を並べてみた。考え方の基礎部分の違いによって表現が変わっているが、ある特定の店で強い売上を作ることから始めることに変わりはない。

90年代は自分の店で自分が売上を作るという意思表明であるし、00年代ではチェーンオペレーションの中で力のある店で売上を作ることに主眼が置かれている。ともに自分が主体となって拠点となることを想定している。

00年代→店を絞って集中的に商品を投入し、特定の店で販売実績を作ると表現している背景には、拠点中心的な配本をして、その中から何店舗かで強い売上を作る方が、結果として大きな売上を作ることができる、というチェーンオペレーションの経験知があった。

10年代になると、出版社の営業担当の目線で10万部計画を実施することに主眼が置かれ、自分ではなく営業担当が売上を作ることを想定した文章表現になっている。
塾生が10万部計画を実行する段階を想定してこうした表現になった。

商品の選定について言及しているのは二つだけだが、90年代では売れそうな作品としているものが、10年代前半になると売れている作品に変わっている。

売れるかどうかわからないままで計画を始めて失敗してしまう事例があったことから、1ヶ月で1万から2万程度といった数字まで出して表現するように変わった。

拠点(基幹店)づくりというのは商品の特性をはっきりさせること、マーケティング戦略の方向性を特定するために行うテストに他ならない。

テストマーケティング
第一期生で30万部売り伸ばし計画を提出した営業マンの対象商品は社員食堂の管理栄養士チームによる作品だった。1月下旬の発売で、2カ月ちょっとで6万部に到達した。仕掛け売り店で結果が出ている。

内容がユニークなのでマスコミに取り上げられやすく、話題にしやすい本なので30万部計画に取り上げたと塾生は語っていた。

1次テストマーケティングは街中店、オフィス街店、郊外店(東京近郊店)に分けて実施した。どの店でどれぐらい売れるかわかると対象客層がつかめるし、それぞれの店は他書店に対する影響力のある店なので、実績がつくれた店を拠点とすることができる。

横浜駅東口と池袋駅西口の店が販売実績で群を抜いていた。横浜駅東口は25歳前後の若い女性向けの店で、池袋駅西口デパート内の店で主婦層も強い店であることから、結論として女性客全般に受け入れられると判断した。

そこで、店頭での展開写真と販売データをもとに注文書を作成し、各チェーン店のキーとなる2、3店舗でそれぞれ60冊以上の仕掛け売りを設定、合計50店舗で30万部計画の第二段階の仕掛け売りの広がりを作る活動に移行した。

営業マンが拠点作りで留意したのは次の4点だった。
.客層がマッチしているところでは、必ず実用書部門で一位を取る
.掲載された雑誌や新聞記事は、どんなに小さなものでもPOPにして配布する
.アイキャッチとして、小型の体脂肪計を一緒にディスプレイする
.売れている店舗の写真を撮って、他店に見せて回る
これらは営業部全員による確認事項で、全員が共通して行うようにしていた。

女性客が多い店が強いことが判明したので、第2次テストマーケティングを女性客が多く、しかも実用書の強い二つのチェーン店で実施した。料理書部門や実用書部門で双方ともベストテン第一位を取れた。
二つのチェーン店の販売データをもとに、他の有力ナショナルチェーンへ段階的に営業強化していった。

売れていることがわかる注文書
仕掛け売りが成功して拠点づくりができたら、10万部計画の次のステップでは仕掛け売りの広がりをつくる作業が待っている。

営業の基本は足で稼ぐと言われる。確かに店を回って担当者と話し込んで受注をすることが基本であることに変わりはない。営業マンのセールストークによって受注量が違うことは確かなことだ。

それでも、営業マンのセールストークの良し悪しだけでなく、ツールとして使う注文書をはじめとした販促物の出来が受注量を左右することを知っておくべきだろう。販売員がその気になる注文書というのは、売れていることがわかることがとても重要な要素だ。

受注が促進できる注文書は、売れている事がわかる注文書だし、書店員に自分もこの商品を売ってみようと思わせる、動機づけのヒントが書き込まれていると受注しやすくなる。だから、気のきいた営業マンは常に注文書を工夫している。

拠点での販売実績や、その店のどういう場所で、どのように商品を展開して売っているのかがわかると、自分の店のどこで、どのように売ったら、どう売れるのかは理解しやすくなるはずだ。そして、書店員をその気にさせることができるだろうと思う。

書店員をその気にさせるためには、「そうなんだよな~」と共感させる内容も必要だ。
過去の事例では似顔絵付きの注文書やダジャレが書店員に受けて、仕掛け売りの広がりに寄与したケースがあったと聞いている。

基本的には店を訪問して注文書を渡し、説明をして受注をする。だが、すべての店を回るわけには行かないだろうから、それに代わる手段もある。FAX通信を使って一斉送信するやり方だ。そんなに費用はかからないはずだし、多くの出版社が採用している。

FAXなんて見ないよという書店員も最近は増えているようなので、最近はメール送信をするケースも多くなっている。
送信先のアドレスを集めるのは大変だろうが、200~300ぐらいなら可能だろうと思う。

売れていることがわかる新聞広告
出版社が広告する時に想定しているのは購入してくれる読者なのだろうが、一番熱心に新聞広告を読んでいるのは誰なのだろう。毎日必ず新聞を読むことを日課にしていて、記事よりも新聞広告の方を熱心に見る書店員は多い。

広告が掲載されると店頭でお客さまから聞かれることも多いし、商品の在庫が無いとお客さまからクレームを言われることもある。出版社と読者をつなぐ書店にとって新聞広告は情報としてかなり重要なものなのだ。

読者と、書店員や取次の担当者を始めとした業界関係者に、好印象を与える新聞広告が最も効く広告だと思う。
中でも売れていることがわかる新聞広告が大きな販売実績を呼び込んでくれる。

売れていることがわかる新聞広告は、読者に「買わなくちゃ」と思わせ、書店員や取次の担当者には「売らなきゃ」と思わせることができる。
最も効果が高い広告と言えるだろう。

ベストセラーランキングの第1位は売れていることが直接的に伝わる情報だ。書店名やチェーン店名が明記されていると信用度が増すし、複数の店名が並ぶ新聞広告を目にすることも多い。

広告情報を載せた注文書を事前に流して、店頭に商品が並んだ後に広告が出るのが効果的だろうと思う。新聞広告にリンクした受注活動を行って書店の店頭に商品を並べる。
広告の掲載と、受注分が出庫されて書店の店頭に並ぶタイミングをうまく調整することも大切だ。

広告が掲載されるタイミングで書店の店頭の一等地でその商品がボリューム陳列されていると訴求力がとても高まる。
なんでこの商品がこんなに並べられているのか不思議に思った瞬間、新聞を読んで無意識に記憶された広告が商品を見て表に現れてくる。すると、やっぱり売れているんだと納得感が生まれてくるはずだ。

仕掛け売りの全国的な展開をつくる
仕掛け売りの拠店づくりが成功した場合、その店つながりで仕掛け売りの広がりをつくる営業活動をすることができる。
同じような立地条件であったり、客層が似ていたりする店には、仕掛け売りの輪を拡げるのは容易だと思う。

拠点づくりが成功した店がチェーン店であるなら、その店を通じて本部に話を持ちこみ、チェーン店内の他店へ仕掛け売りの広がりをつくる営業をするべきだ。同じチェーン内のあの店で売れているなら、自分の店だとどのくらい売れるか予測がしやすいからだ。

チェーン本部の担当者は複数の店で販売実績が上がっていると、チェーン全体で売り伸ばそうと考える。だから、複数の店で仕掛け売りを成功させてから本部に話を持って行くと、話が通りやすくなる。

特定のチェーン店で仕掛け売りが成功すれば、似たようなチェーン店が乗ってくれるだろうし、競合するナショナルチェーンも追随してくれる確率が高い。

取次の営業マンに協力してもらって仕掛け売りを拡げることも可能だ。仕入部、特販部、支社単位など、受け皿のタイプは様々だが、取次の担当者の応援を得て、取次のネットワークに属する書店宛に営業を掛ける事ができる。

営業スタッフの少ない出版社で、地方出張がままならないようなときは取次の応援が頼りになる。地方紙に新聞広告を出してエリアマーケティングを強化する場合も、地方を地盤にした取次の活用も有用な方法だ。

話題性を高める
『カント』が最初にパブリシティに登場したのは『王様のブランチ』だった。発売から丁度1ヶ月経った頃の出来事で、六本木のある書店が、「今、お店で一番売れている本」として紹介した。
紹介した書店員さんも番組に出演し、書影がしっかりと映っていた。

その店では初回に100冊納品して、一等地での大きな展開をしてもらっていた。そして、それが驚くほど売れていった。『今なぜカントなのか』それが肝になっていて、興味を示した番組の方から取材があったそうだ。

『王様のブランチ』の反響はとても大きく、TV番組のパブリシティ効果の大きさで話題性が一気に高まった。
さらにその翌日、産経新聞の「話題の本」でも紹介され、業界紙にも担当編集者のインタビュー記事が載った。

3月3日、日経新聞の「ベストセラーの裏側」に掲載された。そして3月7日、朝日新聞の日曜日の書評欄の「売れてる本」で紹介された。同時にエンデバ―出版はカントの全五段広告を掲出した。書評記事と広告が連動し、その反響は大きかった。

首都圏の大型店で大きな展開をしている影響は大きい。書評コーナーの担当者も書店を回って商品の展開状況を見ているし、売れ行きには敏感だ。それぞれの店のベストテンコーナーの銘柄もチェックしている。

その次の話題性の高まりはNHKの『おはよう日本』で紹介されたことから始まり、『クローズアップ現代』で最高潮に達した。

リーマンショックで経済が破綻し、暴走する資本主義が崩壊した。経営者たちはいかに経営すべきか自問自答し始め、マネジメントの古典への回帰現象が起きている。その結果古典物の代表としてドラッカーや松下幸之助が再評価されている。

企業の最先端で働くビジネスマンたちは、いかに生きるべきか考え、哲学書にその回答を求めるようになった。このような文脈でTV番組で特集され、人々の興味をそそった。

こうした社会性に富んだストーリーで語られる素材は視聴者の興味を引き、TV番組でも取り上げられやすい。番組に取り上げられた作品の話題性の高まりは一段と大きくなっていく。

プレスリリース
ミリオンセラー計画を実施した作品がマスコミに何度も登場して売りまくっている。それを見ていた塾生は自身の計画に取り上げる素材は、マスコミに取り上げられやすい作品がいいと考え、それに見合った作品を見つけるまで辛抱強く待った。

熟考を重ねて、湯約探し出した作品で30万部計画を提出した。だから、彼の計画書は他のメンバーよりだいぶ遅れて提出されていた。

昼食を食べるだけでダイエットができるレシピを考案して、社員食堂で提供している栄養士がいた。そのレシピを公開する料理本が発売された。

体脂肪計を売る会社の営業マンが肥っていたら、お客様は買う気にならないのではないか。この会社の社員食堂で昼食を食べた営業マンたちは確実にダイエットできていたし、営業でも高成果を上げていた。

こうした聞いた人が飛びつくようなストーリーがあればプレスリリースは成功しやすくなるはずだし、取り上げられると話題性は充分に高まる。
プレスリリースと合わせて新聞社、テレビ局を中心に献本作戦を実施した。

広告は朝日新聞に掲載したが、朝日新聞の生活欄に記事として紹介された。非常に効果があったので、その記事をコピーしてPOPとして使うため営業の度に持参してお店に配っている。今後も新聞広告は継続する予定だ。

また、テレビ朝日の『やじうまプラス』やNHKの『サラリーマンNEO』でもご紹介いただいた。広告出稿からパブリシティへの転換がスムーズにできている。朝のテレビ番組にも交渉中だった。

販促会議ではTV番組で取り上げられやすいアイデアを出し、どういう切り口なら取り上げてもらえるのか、番組の構成も含めてメンバー全員が企画案を提出した。

メンバーの計画案はどれも不採用にすることなく、なぜ痩せるのか、レシピの分析なのか、食習慣がメインなのか、切り口の違いを明瞭にしてそれぞれに番組の企画案を作成した。その中からTV番組にあった企画をテレビ局に持参した。

TV番組ごとに切り口を変えて提案すれば、どの番組でも視聴率が稼げると判断すれば採用されることが多いのだろう。
TV番組ごとに細かな違いをつけて企画書を作り、TV番組に提案しまくった作品は、面白いようにTV番組に取り上げられる状態が続いた。

ミリオンセラーストーリー
計画書や結果報告書のサンプルを作り、塾生の活動を総括したらミリオンセラーストーリーが出来上がった。
1.目的(なぜこの計画を行うのか?)
実施する背景は?
成功させるとどうなるか?
2.商品(取り上げる素材とその理由)
作品をどう評価しているのか?
なぜ売り伸ばしたいのか?
ミリオンセラーにできると思える素材か?
3.組織(企画の推進母体をどう作るのか)
  社内プロジェクト(営業部内、編集とのコラボ、全社組織?)
  社外を含めたチーム(取次、書店をどう巻き込むか)
4.拠点づくりと販売方法(仕掛け売りで実績をつくる)
効果的な仕掛け売りができる店舗の条件は?
どの地域の何店舗で何冊から仕掛け売りを始めるのか?
営業方法、受注部数の目標は?
拠点(モデル店=販売データを使える店)では大きな展開で実績をつくりたい。
大きな数値を出さないと積極的な重版もできないし、仕掛け売りを広げられない。
5.仕掛け売りの広がりをつくる(仕掛け売りの書店を増やす)
売れていることがわかる注文書(拠点での仕掛け売りの写真やデータを示す)
FAX通信、メール配信(1店舗当たりの受注・販売目標は?)
100冊単位の受注は何店舗か?
チェーン本部経由で仕掛け店を増やす
取次経由で仕掛け店を増やす
6.話題性を作る(広告を掲載する)
広告計画は?
売れていることがわかる新聞広告
広告の媒体と大きさ
7.話題性をつくるⅡ(パブリシティへの取り上げ)
新聞、雑誌、書評家へのアプローチは?
著名人へのアプローチは?
王様のブランチ等のTV番組へのアプローチは?
マスコミの取材、メディア出演のプロモーションは?
TVドラマ化、アニメ化、映画化等のプランは?

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